勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

骨の髄まで工夫して

亀成園のお父ちゃんが猟師をするようになってから一年が経とうとしています。鉄砲猟ではなく罠なので、罠を仕掛けた場所を毎日見回って、かかっていなければどこかに跡がないか調べ、考えてまたかけ直しを繰り返します。もしかかっていた場合は早めに仕留めてしまわなければ獣も気の毒だし、血が回ってしまうと食べられなくなり無駄な狩りになってしまうので、成果のあるなしに関わらず毎日マメに見回ることが大切です。そんなわけで雨が降ろうが暑かろうが寒かろうが眠かろうが、来る日も来る日も罠のチェックを欠かさず行い、跡がないか観察し、次の手立てはないかと現場での考えを積み重ねてきたこの一年です。それだけでもなかなかできることではないので、立派なものだと感服しておりますが、最近続けて成果を収めることができました。

 

しばらくぶりに鹿の雄がかかり、大喜びしての精肉が終わるか終わらないうちに、初の猪も仕留めたのです。大体見回りを見送っても成果なしが普通だったので、驚くやら嬉しいやら、お父ちゃんの株価が急上昇です。一定の所得を頂いていた安定のサラリーマン時代とは一八〇度異なる不安定な浮き沈みの自営暮らしは、楽でないし悩ましいこともありまくりですが、報われた時の喜びが段違いなので、感情も思考も豊かになります。

 

そんなに頻繁にかからないとはいえ、数度ではないし、丸ごとの頂き物も何度かあるので、解体や精肉はそれなりに経験を積むことができています。以前は脚一本で大変だわと思っていたのが今回は集中して手際よく片付けることができました。ちゃぶ台にどっさり並べた肉入りの袋はまさにひと財産です。

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干し肉の技術がまだないので、すぐ消費する分以外は冷凍になります。すっきりしていた冷凍庫が一気にパンパンになり、追加の一頭でどうにも入らなくなるので知り合いに幾つかもらってもらい、ジビエ普及も前進です。消費力の高い(食べ盛りの)おうちに声をかけると目をランランとして受け取ってくれるので、肉の力はすごいなと実感します。肉不要の家庭もあるので一概には言えませんが、私は好きだし同じく好んでくれる人がいると幸せですね。それでもまだ獣を普通に食べる家庭は少なくて、害獣とされて処分されるだけの猟が多いのが現実です。解体や精肉の手間や管理を考えると無理からぬことなのではありますが、しっかり頂いて命をつなぐ暮らしもあるのだということをあきらめずに実践し、普及活動をしていきたいものだと思います。

 

かつての狩猟採集文化にあった人々のように、仕留めた獲物の全てを無駄なく使い尽くすことはまだまだ難しいけれど、食べる部位は増えました。枝肉も内臓の幾つかも工夫して調理できるようになりましたよ。ダメもとでの工夫と経験と挑戦の繰り返しです。内臓を必要以上に摂取すると身体がびっくりしているのを感じるので食べ方には更に改善が必要ですけどね。それでも子供たちがたくましくなったのかもしかして私の腕が上がったのか、以前は残してばかりだった内蔵にも抵抗がなくなってきたこともあり、気が付けばなくなっているようになりました。こういう時貪欲な口がたくさんあるのは大助かりです。ワンコもね。

 

脚の長い鹿の骨は入りきる鍋がなくてなかなか消費できなかったのですが、初の猪は脚が短かったです。

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活力鍋に全部入ったのでクツクツ煮込んで柔らかく柔らかくしているところですよ。骨の髄まで溶けるかな、飽きない味付けを考えなきゃな、でも失敗したら鶏たちにバトンタッチです。小さな亀以外はあまりあるパワーの亀成園です。