飯高町の隣の隣町、多気町には熱心な司書さんぞろいの大好きな図書館があります。松阪市街地の図書館よりもうちから近いということで通うようになったのですが、新刊や季節のおススメ本だけでなく、ちょっとした空きスペースに置かれる本も小まめに更新されており、その選書のセンスがとても素敵で、新しく目にとまる本が充実しているのがなにより嬉しいです。それに企画展も数ヶ月に一度は実施されるし、更に図書館を使ったイベントにも積極的で、地域の交流スペースにもなっています。
その図書館と多気町が協力して、児童書作家である杉山亮さんを山梨から招いて、「ものがたりライブ」を開催してくれました。
『どんなときも名探偵』などの名探偵シリーズ、『怪盗ショコラ』のシリーズ、良寛さんみたいな用寛さんのものがたり迷路という、何度も遊べて楽しみ方は自分次第の創作本など、ワクワクする本をたくさん世に出して下さっている作家さんは元は保父さんの走りであり、糸鋸を駆使した創作玩具を作っていたこともある、十重二十重に魅力あふれる方です。
特に私が今まで読んだ本の中で面白かったのは『空を飛んだポチ』という、語り口調の笑い話で、子供たちに聞かせて大盛り上がりしていました。どうやらそれが「ものがたりライブ」というやつだったのです。
空を飛んだポチ ─杉山亮のものがたりライブ─ (わくわくライブラリー)
- 作者: 杉山亮,おかべりか
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/21
- メディア: 単行本
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気のいいおじさんにしか見えない杉山さんが、目と鼻の先の距離で、飯高町から集まった数十名の小学生を五割ほど含む私たちにオモシロ話をしてくれます。導入で手遊びをし、子供たちの反応を見るためもあり独特のクイズなんかして、さてと話し始めたのが前に大笑いした話でした。でもまさかご本人の口から聞けるなんて、大感激です。20分くらいもかかる話なのにもちろんつっかえることもなく笑わせまくりで盛り上げ盛り上げスラスラと想像をかき立ててくれます。どんな話かというと「小淵沢の巨大カブトムシ」なのです。夏の観光シーズンの渋滞を回避するために虫に乗り出した人がいて、杉山さんも挑戦してみたらトンデモナイことになったという破茶滅茶な創作話ですが、これがもうとにかく細部まで面白くて、よくわかんないけどとりあえず来てみた子供達みんな大満足です。
一つの話が終わるとすぐにテンポよくまた幕間的遊びの時間があり、次に怖い話、またオモシロ要素たっぷりの早口言葉なんかして、昔話の漫談で締めくくりとなりました。実に90分、あの手この手でオモシロ言葉の洪水を浴びせかけてくれて、もう笑い過ぎて頰肉が引きつって痛くなっちまいましたよ。
落語をきちっと覚えるのでもなかなかできることではなく、読み聞かせしかできていない私にはあらゆるストーリーテリングはまさに尊敬しかないのに、古今東西の漫談に加え創作話も引き出しいっぱいに持って自在に操る達人技を目の当たりにでき、脱帽し過ぎてつるっ禿げになるところでありました。
落語ライブなどもなかなか行けないので、毎年津で行われる子供寄席を逃してすねておりましたが、こんだけ笑ったらお釣りがっぽりです。芸ができる人への道はいつ開けるやらわからなくとも、いい芸に触れられて家族みんなで楽しめたことに心から感謝です。
もしどこかで「ものがたりライブ」と聞いたなら、ためらい損ですよ。口コミを広めて再度来てくださることに念を込めて。