勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

田舎で子育てには山村留学が効く

子供たちの通う香肌小学校において、親子山村留学の取り組みがいよいよ動き出しました。児童数が壊滅的に減少する小学校が消滅してしまうのをなんとか食い止めるため、町から児童に来てもらおうというプロジェクトです。

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即移住につながるとは限らなくとも小学校の間だけでも山や川に囲まれた最高の環境で過ごしてもらうことで、留学生も在校生もその家族もWin-Winで地域の活性にもつながればいいなとの目論見です。 運営体制がなかなか整わなかったのですが、学校を事務局とし、教育事務所や地域振興局と共に受け入れ体制を確保することが了承され、とにもかくにも身近なところからビラ配りをし、話題作りを行うことで進めていくことになりました。口コミの力は強いですから。

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小学校のHPも公開されるので、体験教育の様子や香肌小の環境が写真などで具体的にわかるのではないかな。 
 
 親子山村留学を進めていく立場として、改めて飯高町に移住する魅力を振り返ってみます。
 
ここは日本の多くの田舎と同じように自然の美しさが残されているだけでなく、地元民と移住者の風通しが良いことが挙げられます。世界的にどこの田舎でもそうだと思いますが、血縁の多い地元民は地域に網の目のようにずっと暮らしていて、子供たちが出ていく寂しさは抱えているものの、だからこそなのか得体の知れない新参者には冷たいことがよくあります。突拍子もないことをすることが恐れられ、習慣の違いが歪みを大きくし、また意欲に燃える移住者が意地を張り、お互い居心地が悪くなってしまうことが多々あります。それは大いに無理のない感情で、どちらも自己防衛してしまうのは自然な流れなのだと思います。
 
 でもそれではもったいないですね。 
 
飯高町においても全ての住民と懇意なわけでもないし、他の人の苦労話を聞くこともあるのです。とはいえ亀成園の私たちが飯高町に移住して来て3年間、出会う人の大なり小なりのありがたい親切に支えられてなんとかやってきているのが紛れもない真実です。他の移住者を見てみても、移住者同士だけでなく、地元民とも上手に仲良くお互いを受け入れているほど、暮らしは楽しそうです。 
ちなみに我が家は基本いつだって食欲旺盛なのでエサにつられることが多いです。土間の上がりにどっさり置かれたキュウリ、箱で届けられたジャガイモ、噛まれへんからと回ってきたおせんべいの数々、釣り過ぎたとお裾分けしてもらったハマチ、などなど。少人数では消費しきれない食べ物がうちに回ればあっという間なことがどれだけ知れ渡っているのでしょう。とかく飯高町は良い人だらけです。 
食べる恵みばかりでなく、通学路の子供たちをいつも見守ってくれている人も多いです。車はゆっくり走ってくれるし、下校時間に猿が出たら追い払ってくれたり、下校中に野菜をいただいてくることもあります。やはり餌付けなのか。 
 
子供がいたからというのは大きいけれど、そうでなくて定年後の移住者の方々も飯高町では馴染んで一緒に地域を守っています。地域の方ほとんどが人生の先輩という若年の我々と違って、五十年以上も違う暮らしをしてきた方々が馴染んでいくのはいつもすんなりいくわけではないでしょう。それでも地元を守り続けてきた人々と、惚れ込んだ新しい場所に移り住んだ人々が手を取り合えるのは大きな力になります。 ずっと受け継がれているお祭りにしても、自然豊かだからこそ必須の草刈りにしても、手を取り合って動く人々なしでは成り立ちません。私たちはまず地域行事に赴いて楽しむことから始め、徐々に顔見知りを増やしていき、ささやかながら草刈りなどの労働力となり、人手を増やすことでこの地域がずっと続くことを願っています。 
 
山村留学に興味を持ったら即移住というわけではありません。自治会の役が回ってきて大変だなんて思うと尻込みするのは当たり前です。田舎の当たり前と街の当たり前はお互いを想像を超えるほど隔たっているのでしばらくは戸惑うことばかりかもしれません。だから即移住定住でなくて、とりあえず小学生の間だけ、一年だけでも構わないのです。子供と一緒に飛び込んでみてほしいのです。それでここはいい、となったら勿論ずっと暮らす準備をしたらいいし、あの頃は楽しかった、という大きな経験をするだけでも後世まで衰えない生きる力がつくのではないでしょうか。なにせ暮らすとは毎日のことだから。朝起きてから通学して下校して、お休みの日も毎日山が近く、清流が近く、心地よい人々に見守られた暮らしなのです。それを親子で体験するのです。
 
 私は移住して一年目はずっと緊張でガチガチしていました。慣れない車の運転、遠巻きに見て近付ききれない人々との関係、自分のできる仕事は何だろうか、ここで本当にしたいことは何なのか、深く考えずに飛び込んでみたものの人並みの不安を抱えて手探りでした。まあ今もまだまだ生きる道を探しているし知らない人も多いし蛇は出るし、どこに安心があるのかというくらいの暮らしですが。それでもどこかに逃げ出したいと思うことは全くなくなり、絶対ここで踏ん張ってやるという熱を保ち続けています。何処に居たって何をしていたってないものねだりの不満や不安がついて回ることに変わりはないから、決意の熱は揺らがずにいたいものですね。
 
 火が付いてくれる人を応援したい。飛び込んでみたい人をちょっとでも支えたい。そんな気持ちでこれから香肌小学校の親子山村留学制度にチャレンジしていきたいです。気になったらまずは学校に電話してもらって見学から。こんなに素敵な学校がありますよ。