勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

松阪牛を見て来ました

ほとんど口に入ることもありませんが、松阪といえばやはり高級和牛の松阪牛が有名ですね。市街地ではステーキの立派な看板が出ておりますが、十中八九素通りです。悲しいことに。でも日本のみならず世界津々浦々からのお客様でいつも賑わっているようなので、市民としてはちょっとは誇らしいのですよ。

 

その松阪牛を肥育している牧場を見せてもらえる機会がありました。うちからは一時間程の、だいぶ街中、と思いきや広々とした田畑の中に立派な牛舎が建っていました。松阪市ではなく隣の多気町にありました。料理クラブで有名な相可高校のわりと近くです。ポーッと見ていただけで写真がなくてごめんなさい。それはもう立派な牛がたくさんだったのですが。

 

松阪牛とは、松阪で生まれ育った牛というわけではなく、松阪及び近隣地区で肥育された出産前の雌牛のみを指します。歳の頃は二歳半から三歳くらいのはちきれんばかりに育った黒毛和牛です。松阪牛を肥育する牧場では出産も搾乳もなく、ひたすら肥育なので、どの牛も生まれは松阪でなく全国バラバラなのです。生後半年少しで子牛市場に出される子牛の中で、良い雌を連れて来て育てるのが松阪牛牧場の仕事なのです。但馬とか宮崎とか、遠くは石垣島から来た牛たちもおりましたよ。はるばるようこそ、ですね。

 

私が訪れたところは黒くてぶりぶりに太った牛が400頭暮らしていて大迫力でした。連れて来られて間もない子牛たちは10頭ほどまとめて肥育され、その後二頭ずつのペアとなって仕切りのある囲いにそれぞれ入れられます。大きな動物なので、あまり力関係があり過ぎると危険なこともあるのか、近くで育つ個体の相性は大切なようです。なんせ女ばかりの世界なので、仲良し同士が近くにいるというのは何にも増して大切ですね、と妙に納得してしまいましたが、真偽やいかに。

 

そばによるとかなり迫力のある牛たちですが、そばによらなければそこにいることもほんのりとしかわからないくらい、牛は静かな生き物です。もちろん匂いはあるし、熱気もあるのですが、バタバタしていないし騒々しくありません。なんとも扱いやすそうで、その上価値の高い生き物なのだと驚いてしまいました。広々とした運動場のある牧場だとまただいぶイメージが違うのかもしれませんが、そういえば高原の牧場なんかでも牛が騒々しくて存在感を放っていたイメージはありません。淡々とそこにいて草をはんで暮らしていました。牛は大きくて餌は大変だけど、いつもつぶらな瞳でのんびりしている従順な家畜なようです。普段牛肉を食べることは滅多にない私ですが、牛がそばにいる暮らしというのもなかなか魅力的だなと早速影響を受けてしまいましたよ。単純なもので。

 

そういえばくまのプーさんを訳したり、ミッフィー絵本の初期版を訳したり、出版界でも活躍されていた石井桃子さんもかつては東北で農地を開墾して牛を飼っていたようです。牛飼いにはあまり興味がなかったので、その話は真面目に読んでこなかったのですが、つぶらな瞳で見つめてきた牛のイメージがホットな今は、また読み直したくなりましたよ。この辺りでも昔は家に牛が居るところも珍しくなかったようです。もしうちに牛が来たとしたら何処に居ることになるのだろうか、慣れればそばに寄れるようになるのだろうか、もしかして夢の牛車が実現するのだろうか。ほんの一時間の見学で、私の脳はまたまた大忙しです。