勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

努力の晩秋

二年ちょっと続けた給食のおばちゃんを一旦離れることにしました。我が子も含めてまるごと大切な子供たちと先生方への給食に関わる仕事は私にとっても思いのこもった大切な関わりではあったのですが、なにぶん週一回なのでいつまで経っても一人前になれる気がしないまま、時ばかり過ぎていくのが苦しかったのです。学校との関わりは他にもできることがあるし、一旦給食を離れてみるのも私に許された選択肢です。そうして辞して最初の水曜日、もう下処理のための大量の皮むきはしないでいいとの認識は甘過ぎたことを知りました。

 

飯高町に限らず田舎では庭の果樹が余っているのはよくあることです。育ったものの食べ切れずに無駄になってしまう実があれば引き受けたいのが心温かい(意地汚い)私のスタンスであります。そして外勤があったり既にうちの仕事や用事に追われていれば引き受けなかったでしょうが、たまたまぽっかり空いていたため、ありがたくもしょい込むことになりました。

 

たっぷりの渋柿とカリンの実です。

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柿は通行の妨げになっていて切りたいから、よかったら実をもいでってくれと。別のうちではカリンが成り過ぎて、使うこともなく余ってるからどうぞ持っていってくれと。どちらも本音を言えばそんなに多くは要らなかったのに、採り出したら制御できず沢山抱えてしまって、あっという間に悲鳴をあげることになりました。それでもやっぱり手間ひまかける昔ながらの手作業というのはまた魅力的なもので、腰を据えて柿の皮むきから始めましたよ。

 

折も折、小学二年生の次女がかけ算を習っているところなので、なるべく九九の見本になるように並べます。

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五の段、四の段、三の段とどれも途中ですがキリよくかけ算して、足し算すると、私は90個の渋柿をむいておりました。計算してくれたのは長女です。ああ、どうりで手が痛くなるわけですね。

 

鮮やかな紐かけの方法があったはずなのですが、調べる前に手を動かして、思い出せぬまま結んで結んで、全部終わったのは次の日になってからです。努力の手仕事はなんて美しい眺めなのでしょう。

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今までも干し柿は好きで、渋柿が手に入ったら何度か作っていたけれど、せいぜい30個程でした。他の家の軒先にがっつり並んだ干し柿がうらやましくてたまらなかったけど、もう涙なしにはこの風物詩を直視できません。

 

満足に浸る間も無く、まだカリンが残されています。芳香剤としても優秀なこの果物は、日持ちの良さはあるにせよ、なんせ固いのが特徴です。そのままでは包丁を入れることすら難しい程で、生食もできないし、なんやかや加工することになります。とりあえずきれいな三角に並べて色や香りを楽しむことで時間稼ぎをします。保育園にもおすそ分けして嗅覚を刺激してもらいましたよ。

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気を取り直して現実を見たら、まずは定番の蜂蜜漬けからです。皮はむかずに種だけとって、乱切りにして消毒した大きめの瓶に詰めます。蜂蜜を一本使いきるのは惜しい気がしますが、カリンから汁気が出て増量&のどの薬ができることを信じて、とっておきの保存食を仕込みます。黄金のエキスが冬越しを守ってくれますように。でもカリンは三つしか減ってません。

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次に初めてのジャム作りに挑戦です。参考はクックパッドで。皮をむいて細切れにしたカリンをかぶるくらいの水で浸し、砂糖をかぶせて煮るというやり方です。こうするとエキスだけでなくカリンの実も食べられていいかなと期待して頑張ってみました。また手が痛くなります。結果は、そんなに食べやすくもないけれど、確かに食べられるようにはなりました。ヨーグルトとの相性も悪くないし、トンテキソースなんかにも応用できそうです。小瓶三つ分になりましたが、これでも四つしか使えませんでした。

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やはり大瓶の出番ですね。氷砂糖1キロ、ホワイトリカー一升の力を借りて、瓶に陣取っていたシロップ漬けの梅を追い出して(煮詰めてこして小瓶に入れてジャムにしてという作業に追われながら)、ザックザック切ったカリンを次々に詰めていきました。見事にバケツに入っていたカリンを全て保存瓶に移し替えることができました。前二つのチマチマっぷりと比べると見事ですね。口に入るのは一ヶ月以上待たなければいけませんが、また努力のひと財産です。

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スローライフにはよく働く手が必要というお話でした。