勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

科学作品展2019

今週のお題「夏を振り返る」

 

毎年夏休みが明けると次の週末は、松阪市での小・中学生科学作品展があります。夏休みの工作や絵画、自由課題、自由研究などの中で理科分野の作品を集めて学校が応募したものが市の文化センターで展示されます。出品されたほとんどは「入選」となり参加賞としてノートがもらえるので、我が子は毎年なるべく自由研究を一つは行うことにしてノートをもらっています。集まった作品の中で審査員の目を引いたものは「特選」として、きっと違う副賞があるのでしょう。更に際立っていた作品は「特選A」として別の場所で展示されたりするようです。なんと鼻の高いことでしょう。我が子のは出品する前からたいしたことはないなとわかりきっていたのですが、いろんな作品展示を見るのが好きなのでで、出来る限り訪れるようにしています。我が家からだと一時間以上かかって一仕事ですが、公園もあり埴輪館もあり、市街地の中では好きな場所です。我が子たちが大きくなって自由研究なんかしなくなっても嗅ぎ付けて訪れたいなと思っていますよ。

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それにしても近頃は自由研究のレベルが甚だしく上がっているのでしょうか。確かに私が子供の頃より数多くのキットが売られているし、子供用科学雑誌も売れているみたいだし、気になった情報はインターネットでいくらでも手に入ります。何かを知るだけなら不足ない時代になっているので、ネタ集めなら事欠かないのでしょう。なので画用紙一枚、ノート数ページを埋める科学的自由課題まとめならいくらでもできるとは予測できるのです。ですが実際に科学作品展に集まった小・中学生の作品は、そんな生易しいものではありませんでした。大きな模造紙を10枚も使って何十枚も写真を貼ってこれでもかと埋め尽くしていたり、身近な薬草集めとして二十種もの草を採取し、乾燥させて薬効を調べて煎じていたり、草木染め作品として夏に手に入るほとんどの野菜で染めている子もおりました。費やした時間と労力は並大抵ではなさそうです。

 

櫛田川で釣れる魚を調べたり、異なる箇所での水質を比べたりの川が近いという環境を活かした研究もあるし、電池を使った動力装置を作ったり、この時代らしくプログラミングの研究もありました。各学年五十点以上出品されているので、全てをつぶさに見る余裕は時間的にも気力的にもありませんでしたが、偶然か必然か、幾つか目を引いた作品もあります。夏休みの間ずっとカマキリにいろいろな虫を一つずつ与え、後半は脱皮の様子を観察した記録や、柔道の背負い投げを力学的に考察した作品は特に興味深く見せてもらいました。児童・生徒の好みが強く表れている研究は見ているこちらも惹きこまれます。それらに比べて我が子たちのは内容も情熱も薄っぺらで、研究者向きではないことが垣間見えましたが、せっかく様々な優秀な作品に触れたので、来年は活かしてくれるでしょうか。この時期の感動が夏前まで薄れていなければ或いは。

 

本当に様々な面白い作品がありましたが、特にズバ抜けて心を打たれたのが下記です。

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名前を伏せるため表紙の一部、脅迫状のような部分のみしか出せませんが、ここだけでもこの子の気合が伝わります。八切り画用紙を五十枚は下らない大きな研究でした。

 

近くの川にミシシッピアカミミガメが沢山いるのに混じってニホンイシガメも少しだけ生息していることに興味を持った少年Hは「ニホンイシガメの住む川にしたい」という熱い思いで津市の博物館や遠く兵庫県の水族館の研究員を訪ね、根気よく尋ね、イシガメを守りたい想いを込めて自治会長に手紙を書き、自らもイシガメの卵を守り孵化させ、とんでもない情熱で自分のできる全てのことを実行し、記録しています。昼間の親子連れや祖父母で賑わう明るい会場内で、あまりに感動して滂沱しそうになりました。なんてすごい子がいるのだろう。それもテーマは亀。この研究をまるごとノンフィクションの本で残しておきたいです。少年Hの調べによれば、彼の近所の川では2010年の時点では生息する亀の八割がニホンイシガメだったのが、十年も経たないうちにニホンイシガメは二割もいなくなってしまったそうなのです。外来種の席巻は猛烈な勢いです。亀の好きな少年Hは、そして私も外来とはいえミシシッピアカミミガメを憎み殺すことはできませんが、繁殖を抑え、古来種を守りたいと願っています。同じく願いながらも何もしてこなかった私とは違い、少年Hは調べ抜き、行動を起こしました。

 

彼のテーマがこれからどう継続していくのか発展していくのか、大きな流れをおこせるのか世に出ず埋もれてしまうのかわかりませんが、とりあえず「特選A」として今月末にみえこどもの城で再度展示されるので、気力を満タンにして再度見に行きます。突き刺さる作品に出会えた松阪市の科学作品展に感謝です。