春節快楽。2020年も旧正月のお祝いが始まりました。中国で暮らした経験のある身には春節の時期は高揚してしまいます。頭の中には爆竹の音と「福到了(プータオラ)」の言葉が響きます。
春節が近づいてくると市場も賑やかになります。中国らしい紅色の飾りが盛大に売られ、爆竹の露店が設けられ、人々がウキウキしているのが伝わります。家系を大事にする中国では春節は都市部から農山村への帰省が当たり前で、村に親戚一同集って餃子を食べるそうです。富裕層にとっては海外旅行のまたとないチャンスになりましたが、そんなもの国内移動の大混乱に比べたら些細な数ではないのかな。
中国に故郷を持たない私たちにとっては春節休みはどうしたって旅行でした。私たちがいたのは中国でもわりと北側なので、なにせ秋冬はずっと寒くて空もどんよりしていて、緑もほとんどなく全体にくすんでくるばかりで気が滅入りそうでした。なので春節休みというまとまった期間に暖かいところへ、鮮やかな色のあるところへ抜け出すのを楽しみに日々をこなしておりましたよ。帰省のついで、というかメインに八重山諸島に飛んだり、ボルネオのジャングルを訪れたのもこの時期でした。行った先でも中華系の人々による獅子舞は印象的だったし、フィリピンに居た頃もつい中華街に足を運びそうになりましたよ。あんまり混乱してそうなので赤子を連れては行けなかったですが、今でも神戸の南京町での春節はいいなと思います。
なので、現在の新型ウィルス騒動であっても、「日本に来るな」みたいな発言を聞くと本当に心が痛みます。ウィルスを撒き散らそう、外国に嫌がらせをしようと思って旅行する人なんていないのです。日本が嫌いだからダメージを与えるチャンスと思って、わざわざ大切な春節休みにあえてウィルスにかかってまでのリスクを背負って自腹で乗り込むなんてことあるでしょうか。余程の背景や覚悟でそうした国家機密に近い大きな暗黒仕事を請け負う人はいるのかもしれませんが、一般の人にとっては大切な季節に大切なお金を使って、楽しみに旅行をするのです。日本に来たいと計画して、下調べをして予約を取って、体調に気をつけてわくわくしながら来てくれるのです。全体の傾向として日本人より表情や表現が素直でオーバーリアクションな彼らが、どんな喜び方をするのだろうということを想像するだけで私には楽しくて、宿屋開業となってから次年度は、是非とも春節時には中国及び中華圏からのゲストを迎えたいものだと思っています。
「大変な時期ですが、ようこそお越しくださいました」
「体調崩されず来てくれて嬉しいです」
「温泉で温まって美味しい物召し上がって、素敵な思い出を作ってくださいね」
「せっかく来てくれたからには日本を大好きになってくださいね」
今年ゲストを迎えるうらやましい人々がみんなこんな心でいてくれたらいいなと思います。数の多さと勢いに圧倒されて業務は大変ではあるでしょうが、再訪の気持ちを持って帰ってほしいものです。どうにも嫌悪される方はどうぞ引きこもっていてくれますように。つい少し毒が出ましたね。