よく見るとそこかしこに鳥の姿を見つけることができるし、耳をすませば両手で足りないほどの鳥の声をカウントすることもできます。もっと知りたいな、という素直な好奇心をゆっくりじっくり育てるのが楽しいこの頃なのです。
巣作りをする野鳥たちより少し早く、亀成園では今年最初の雛が誕生しました。今回は自家繁殖ではなく、烏骨鶏の卵を購入しての抱卵でしたので、うまく育てばまた新しい血統が混じって群れが強くなるのではと期待を込めています。
なので抱卵する烏骨鶏のメスにとっては自分の卵ではなかったのですが、それでも卵をみれば孵したくなる性質が発揮され、先月からきっちり三週間、立派に温めて孵してくれました。
鶏舎を入ると直ぐに「ピヨピヨ」との声が聞こえます。小さな体からなんと大きな声かとびっくりするほどの鳴き声は、どこにいっても見つけてもらいやすいためなのでしょうか。
だがしかし、あ、ヒヨコがいるぞ、生まれたぞ、と思って覗いてもお目当の可愛い姿は見えません。昨日今日と急に冷え込んだこともあり、母鶏がしっかり懐に入れて守っているのです。卵の殻は空いているし声はするから生まれていることは明らかなのですが、ちっとも姿を見せてはくれないのです。
小さな可愛いヒヨコにうっとりしたいのだけれど、赤子を守る母の姿というのもまた胸に突き刺さるものがあります。寒さから、外敵から雛を守ろうと必死なのです。うっかり手を出すと突いてきますよ。突いても鶏なのでこちらにちっとも致命傷はないのですが、ストレスを与えるのは申し訳ないです。時間差なのかまだ孵化していない卵もあり、母鶏は抱卵を続けています。全部うまく孵るかはわからないけれど、彼女たちの気が済むまで、まだしばらく待ってみるつもりです。
春はまさに誕生の季節です。これから亀成園近辺でも続々と野鳥たちの雛が生まれるのでしょう。その姿を拝むことはなかなか難しいですが、もしかしたら巣を出て飛行したての園児くらいの小鳥にお目にかかることができるかもしれません。
鳥に限らず生き物は春に多く誕生します。けれども過疎甚だしい田舎ではヒトの誕生だけはとてもとても珍しい。この美しい山と清流に囲まれた、生き物でいっぱいの地で誕生する子はこの上なく幸せだなと私は思うのですが、そう直観する人はまだ多くはありません。春の鳥たちのオーケストラを子供に聞かせてあげたい。ちょっと尖がった詩的な移住テーマを思いつきました。