コロナ騒動で先月いっぱい学校が休みになったことにより、児童と保護者だけでなく、給食に関わる人や業種だけでもなく、新聞記事も大きな影響を受けています。松阪市のローカル新聞社では各小学校を回って委員会を紹介するというほのぼのしたコーナーがありますが、休校で取材ができないため記事が落ちてしまうことになります。そこで埋め合わせの企画として、小学校に読み聞かせボランティアをしている人に、児童におすすめの本を紹介してもらおうという企画が持ち上がったそうで、私のところにも話が回ってきました。
既に取材は終わり、記事はそのうち掲載されるそうですが、この機に自分が児童にどんな本を薦めたいのかを改めて考えることができました。私は普段、自分の好きな本を語ることはあって、結果としてそれがおすすめになったとしても、漠然と年齢別に薦めることはしたことがありません。読書はとてもとても個人的な孤独な活動で、人によって興味もレベルも雲泥に差があるので、何年生だからで決められることではないと思うのです。
子供には空想家もいれば科学者もいるし、RPG的話を好きな子も日常的な話を好きな子もいます。大きなシリーズを読み進めることに喜びを覚える場合もあるし、短編で十分読書感を味わえる場合もあります。もちろん壮大なファンタジーを読破した後、短いノンフィクションも読んで同じように感動することもあるし、歴史物語もSFも同じく好むこともあります。ほんに読書は幅広いです。なので子供も大人も好きな本を読めばいいのだし、こういう子におすすめ、は是非提示したいけれど、漠然とおすすめを選ぶというのは混乱する企画でした。まあ新聞記者さんのほうはそんなに深く考えていたわけではなく、軽いノリだったのですけれど。そして取材を受けていて、ああ記者さんはちっとも本に興味はないしこれから先も読まないだろうということもわかってしまったのですけれど。多分新聞記事もほとんどの人にとっては読み流す、むしろめくり流すだけのものです。だから掲載される記事もほとんど人目に止まることはないだろうし、薦めた本が読まれる可能性も極わずかですね。そんなものだとわかった上で、せっかく心に灯った熱を少し記しておきます。
私が子供に本を読んでおいてほしいなぁと思う理由は案外単純でした。頭が良くなってほしいわけでも静かにしていてほしいわけでもありません。好奇心と安心、この二点に尽きます。
自分も子供たちも元気でいる限り、好奇心を刺激し続けていてほしいです。そして人生何が起こっても前向きに楽しむために読書は有効だと思っているからです。なにせ本の中では自分の小さな人生では考えられないようなことが起こります。各主人公は不測の事態にショックを受けながらも、自分の意思でかつ人の助けを借りて、失敗しながらも知恵を絞ってあれやこれやと乗り越えていくのが王道のいい物語です。主人公の状況はバラバラで、性格もいろいろで乗り越え方も様々ですが、頑張って人生に立ち向かっていく姿を見たくて私は夢中でページをめくるのです。そしてその物語を本当に好きになると、登場人物たちに親しみを感じ、頭の片隅に彼らを置いておくことができます。
そうやって孤独な読書を重ねていると、不思議なことに孤独でなくなってくるのです。現実にちょっと壁にぶつかっても、なんだか安心して受け止めて立ち向かっていくことができるのは、多分絶対本を夢中で読んできたおかげなのです。
そんな真意を持って選んだのが以下の三冊です。低学年、中学年、高学年に各一冊というお題でしたので、物語の内容や読み易さのレベルを考慮したら残ったのがこの三冊でした。
アーノルド・ローベルさんは教科書にも出てくる「おてがみ」というがまくんとかえるくんの話で有名ですが、どろんここぶたなど好ましい本が多いです。
海洋学者が書いたイルカの本は、ファンタジーであって現実的でもある、めちゃくちゃ大切な一冊だと思ってます。