勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

農スキルアップの犠牲者

そろそろ亀成園でも夏野菜が採れる頃です。基本的に去年取れた種を育てて、ハウスなし化学肥料なしの栽培なので、採れ出すのはいつも遅いです。春からの長い野菜不足が解消され、消費に追われる大転換。大好きな夏野菜をギリギリまで我慢するのが畑を持ち出してからの密かな楽しみです。欲しいものをすぐに手に入れない楽しみというのか、ギリギリまでお腹を空かせてから食にありつく喜びというのか。近隣の畑に成るキュウリやナスに唾を飲みながら、つい手を出しそうになりながらをこらえて、我が家の乏しい畑を眺める6月も過ぎました。さあ、夏野菜の季節です。

夏野菜といえばすぐに思い浮かぶのはこの絵本。表情が最高です。

 

今までは亀成園の畑は父ちゃんのこだわりで、私は収穫を手伝うくらいで育苗はほとんどできていませんでした。それが今年は家に居る日が多くなったこともあり、予定より野菜苗が余ったこともあり、メインの畑とは別に私が世話をする野菜の場所を作って育てています。畝づくり、植え付け、支柱の立て方、脇芽の取り方、堆肥のあげどきなどいちいち聞いて、時には助けを借りて。毎年なにかと手伝っている娘のほうがよっぽど頼りになります。が、それもお互いの経験です。何年もかけて自分なりに農法を磨いてきた父ちゃんが、素人同然のわがままな見習い(私)にどう伝えるか。これから様々なゲストに畑で農家体験をしてもらうのにも、教え方の練習は大事ですね。というわけで私はあえて知ったかぶりをせずに素直に教えを乞いながら、それでも自分の野菜株に責任をもって、日々畑に向き合っています。

 

 種が発芽するまで、本葉が出るまで、植え替えてから根付くまで、花をつけるまで、そして実がなるまで。果菜が成るまでに越えるハードルは多いです。それまでにどれだけいい土を用意してやれるかにかなりかかっておりますし、陽や水があってこそ育つのですが、他の草や虫に負けてしまうことも多いです。というより放ったらかしにしてしまえば負けてしまいます。園芸の花もそうですが、野菜も雑草に比べると格段に弱い生き物です。そして虫より尚弱い。農園を持つ人はみな草と虫からかわいい苗を守ってやらなければなりません。私が今年特に手強く感じるのがこいつですよ。

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卵だけはきれいなんですけどね。こんなきれいな卵からどんな美しい生き物が生まれるかと希望を持ちたいのに、ここから産まれるのはずばりカメムシです。

 

臭いにおいを出す嫌われ者代表で、この地方では「ヘコズ」と呼ばれることが多いです。冬に人家に入ってきてはガムテープで捕獲され、捨てられますが、なかなか減りません。そしてこのカメムシ、細かい種類は違うのでしょうが、米や豆や野菜を吸ってしまう害虫なのです。アブラムシや芋虫などある程度増えたらテントウ虫やカエル、鳥などがわりと食べてくれる虫もおりますが、カメムシは固いし臭いのもあってかカエルにも鳥にも人気がありません。放っておいたら作物をチュウチュウ吸って成長してしまいます。私のシシトウには卵から孵ってしまったカメムシの小さいのがびっしり付いてしまいました。大ピンチ。

 

もっと大規模農園ならやってられずに薬を使うのでしょうが、亀成園は虫と向き合う農園です。気合を入れてカメムシ駆除に力を入れました。使う道具はガムテープと割り箸、油、それに手です。

 

シシトウの茎や葉にたかった小さな弱っちいカメムシを見つけてはテープに引っ付けてくるみ、ポロっと落としたのを油の入った容器にいれ、手に付いたのはつぶしてどんどんお命頂戴していきます。土の前にしゃがみこんで、何かにとりつかれたように小さなカメムシを葬っていく中年女性が私です。かなり虫に寛容な者として思うのは、もう役割を終えたりうまく育たなくて弱ってしまった作物を虫が食べるのは仕方ない。むしろ掃除の役目を引き受けてくれていると感謝すらするのです。けれどまさに育てたい作物にたかる虫は、申し訳ないけれど立ち去って頂きたい。農はひいきの塊です。

 

農人と虫との関わり。とりあえず今回は三日ほど集中してかなり頑張ってしまったので大部分を除去することができました。今後も折を見てやっつけ、卵を見つけたら取り除き、大事な作物を守ることができそうな目処が立ちました。作物はそうやって、小さな多くの命を犠牲にした上で育てられていきます。だからどうということはないのですが、思っていたよりも多く犠牲者を出してしまったことが少し痛ましい。でも夏野菜はたっぷりたっぷり欲しい。自分が小さな苗から果菜の実りまでお世話できそうになることはとても嬉しい。

 

多分絶対虫たちは私なぞに打ち負かされてしまったりはしません。余程手強くしぶとく柔軟でふてぶてしいです。それが悔しいような嬉しいような。今年は特にカメムシの多い気候なようです。暖冬の影響で成虫が越冬しやすかったからとか。毎年同じように巡るような季節でも変化はあり、必ずその影響が出てきます。農的暮らしをしているとその変化に敏感になり、気付くことがあり、考えることが多くなります。いつも同じではありません。とりあえず私は思っていた以上にカメムシをやっつけてしまったことにびっくりして、一度ここでまとめておきましたが、まだ勝ったわけではありません。関りはずっと続いて、一喜一憂するのでしょう。負けちゃあいられないけど完封するつもりもない。こんな甘ちゃんで農人が務まるのか疑わしいもいいところ。でもまあとりあえず、自分の野菜苗たちにエールを送ります。もうすぐ実りの季節だね。

 

下記は亀成園父が参考にしている書籍の一部です。