勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

清流の上流で肝を冷やす絶好の過ごし方

今週のお題「暑すぎる」

田舎ではもう秋の風にシフトチェンジして、朝晩はめっきり涼しくなったので、いつまでも暑さを引きずってはいないのですが、もう本当に暑すぎたときの話です。

 

この夏、幸か不幸か思っていたよりも時間に余裕があったので(つまりお休みの日に忙しいはずのゲストハウスがご時世によりあまり賑わわなかったので)、かねてより憧れていた鮎釣りに挑戦するチャンスがありました。

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なにせ今年は生き物がやたらに多い年で、近年稀に見るほど鮎の遡上が多いと聞いたのです。稚魚の放流もお手伝いしているので川の情報はあります。高級ルアーとおとり鮎を使っての高尚な鮎釣りはとても手が出ないけれど、潜って針をひっかけて捕る「しゃくり漁」ならなんとかできるかもしれないと、8月頭に入漁権を購入しました。

 

櫛田川流域や宮川流域ではしゃくり漁というのは極一般的なようです。川に潜る、或いは上から見て狙いをつけてひっかけて魚を捕る。生まれ育ちが町である私には最初何のことか想像もつきませんでした。しかしここは清流誇る渓谷地域。肉眼でも魚は見えます。泡立っていなければ濁ることもなく見えます。そして鮎は香ります。

 

この辺りではしゃくり漁の得意な人は「人間カワウ」の称号がもらえます。京都の実家近くでは、夕暮れに舟に乗って鵜飼いが鵜を用いて魚を捕るのを眺めるツアーが人気でしたが、三重の田舎では人間が鵜になります。断然こっちのほうがかっこいいです。

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鵜はバタバタと空を飛ぶ姿はなんとも不格好なのですが、川の中で鮎を捕まえにかかる姿はなんとも見事です。鮎を放流しても次々鵜に捕られてしまうのは癪なので、真夏の川では人間は鵜を凌駕せねばなりません。人間カワウを目指して、亀成園父も挑戦を始めました。

 

 予想通り初年度の結果はふるいません。震えながら休みながら二時間粘って、二尾逃げられようやっと一尾、が紛れもない釣果でした。そんなことが二度ありました。一尾を焼いて6人で分けて食べる様はさながら『11ぴきのねこ』のよう。

 

 しかし川には鮎がおります。いい香りを放ちながら悠々と泳いでおります。子供たちも見つけるのは随分早く的確になりました。ものすごく捕れそうです。でもまだ現実は甘くなく、潜って震えて逃がしてばかり。けれど亀成園は「亀のようにのんびり粘り強く」が持ち味なので、ちっとも気にしていないのですよ。

 

 なにせ今年はあまりに暑かったので、しゃくり漁に挑戦したことで前向きに身体を冷やすことができたのが大きいです。浅瀬で遊ぶだけでも気持ちいいのは暑過ぎない時の話。猛暑時は上流で潜るに限ります。どれだけ外気が暑くとも、清流の上流は震えるほどの冷たさです。思い出しただけでもブルっとします。そんな冷たい川に行き、目的をもって覚悟を決めて潜り、じっと待つと血の気が引いてきます。でも外は暑いので川から上がって、陽当たりのいい岩場でじっくり身体を温め直してまた潜る。そんなことを何度か続けているとすぐには身体の熱が戻らなくなります。そうなったら引き上げです。家に戻っても数時間は扇風機も要らないほど快適に過ごせますよ。

 

 しゃくり漁をしてみてもう一つ大きかったのは、この夏は何度も鮎にありつけたことです。自分たちで捕ったのはわずかなのですが、腕自慢の師匠たちが励ましに持って来てくれました。人間カワウ様たちは、1時間で20尾、30尾としゃくるのです。ものすごく余裕があるのです。田舎暮らしでは年がら年中物々交換はあり、亀成園も卵があるおかげでそんなに卑下せずいろいろ頂いておりますが、ピチピチの魚はとりわけ嬉しいものですね。頑張って捕れるようになって、分けられるようになりたいものだとつくづく思いました。

 

 三年後くらいには鮎に困らない亀成園になれるのでしょうか。アマゴにも困らなくなるのでしょうか。夏のお客様に鮎のお刺身を召し上がって頂けるのでしょうか。またまた夢は風船のようにふくらみます。川に呼ばれる暑い夏もあと少し。もう少し腕を上げれるか、頑張ってみたいですね。