勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

鶏解体引き受けました

亀成園HPのブログの改訂版です。知り合いの家で飼われていた雌鶏たちを絞めた話です。お互いに覚悟が必要でしたが、無事乗り越えることができました。有難いです。

 

「亀成園に地域の方からご依頼がきました。自分ちで飼育していた鶏がもう卵を産まなくなったので絞めて欲しいと。鶏との暮らしはぬくもりがあるし、ゴミが出なくなるし卵の喜びもあって本当におススメですが、廃鳥(卵を産まなくなった鶏)をどうするかというのは誰もが行きあたる壁です。殺せはしないから生かしておくというのが大体のパターンになるのでしょうが、そうするとエサ代はかかるし安全管理もし続けなければいけないし、次に卵を産んでくれる鶏を受け入れる場所を取られてしまうことになります。愛情かけて数年を過ごしてきた雌鶏を絞めるのは抵抗があって当然で、実は亀成園でも今まで絞めてきたのはオスばかりで、雌鶏は今年が境目でまだためらっていたところなのです。だからこそ、引き受けることにしました。「壁は乗り越えられる人の前に現れる」です。確かイチロー選手の言葉でした。よもや私に縁があるとは思っていませんでしたが、ピンときたのでご紹介。

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羽もふわふわでお尻もぷりっとしている雌鶏は本当に可愛いです(写真はACから)。しかも名前を付けてもらって可愛がってもらってきた子たちにいきなりとどめを刺すのは本当に心苦しいのですが、いつだって誰かがとどめを刺して、肉は他の命につながっていくわけなので、鶏くらい亀成園で責任を持たねばなんだか悔しい気もします。
 
解体作業は実はかなりシンプルです。
前日か数日前から絶食させておいた鶏を持って来て、首を切って血を流して絶命させます。
鍋にたっぷり沸かしておいた湯にまるごとつけます。この時絶命しきっていないと暴れてお湯がはねてとても危ないので要注意です。本当にびっくりします(体験談)
足を紐で括ってぶら下げて、羽をむしります。
まるごとお肉になりました。

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産毛が残っているのは火であぶって仕上げます。
ここまでは外での作業です。血が飛び散るし濡れた羽毛の処理もあるのでね。
丸どりになったら台所で精肉します。
もも肉をはずし、手羽をはずし、胸肉とササミをとります。肉用でない地鶏はもともと肉が少ないのであっという間です。背骨を開け、内臓を取り出します。食べられそうな部位だけ残してあとは廃棄。最後に胸側の骨をごっそり取ります。

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右下に見えているのがハツや卵の素ですね。ササミがとてもきれいで、そのままわさび醤油で食べたらどんなに美味しいかとドキドキしました。
 
この調子で何羽か同じことを繰り返して、ミッション終了です。ご依頼人に家族の数名にも少しだけ現場にも立ち会って頂き、お別れしてもらいました」
 
持ち帰り頂き、家族そろって召し上がって頂いたようです。雌鶏たちに掘り返された畑で残っていた野菜と合わせて庭まるごと料理になったり、庭で網焼きしたり、素敵な家族のガーデンライフにまた新しい色付けをすることになったようです。
 
「普段食べる機会の多い鶏肉と比べて、平飼いの地鶏が格別に美味しいかと言われればわりと答えにくいところだと思います。ガラで摂るスープは間違いなく優しい旨味が噴き出すような美味しさですが、肉はどうしても固くて脂が足りないので一般的には不満が残るものだと正直思います。もともと美味しさの基準は育ってきた環境によってその時の気分によっても異なるもので、何気なく出されて食べてみて絶対に美味しいとは断言できません。もっと本音を示せば、ただグルメの材料という類ではないのです。飼育していた鶏を絞めて食べる。そこには時間の流れと刻まれた物語があります。生きていた、手ずからエサをやって育ててきた鶏を、覚悟を決めて食卓に載せる。日々の食事も勿論身体を作っていくのですが、特別な経緯のある食事は命に刻まれます。よく乗り越えられたなと敬服します。
 
持ち込みのご用はそう多くないでしょうが、もし心当たりあればお声がけ下さい。それと、ご自身では飼っていないけれど命の責任に立ち会ってみたい方、どうぞご指名下さいね。子供たちに関してですが、小さな子のほうがそのまま受け入れてくれます。或いは理性的な子は頑張って受け止めてくれます。逆に感受性の強い子は絶対に無理強いさせないで下さいね。亀成園でも娘たちは立ち会えますが、息子は拒否し続けていますので、環境だけあればいいというわけではないようです。それより自分がしっかり受け止めて、命をつなぐことを深い思い出受け止めていると、そのうち子供にも伝わって自ら扉を開いてくれるのかなと、まあそれもどっちでもいいかと思っています。
 
亀成園でもそろそろ個体選別して羽数を減らす時期です。解体は作業自体よりもっと多く心の力が必要なので、まだそう頻繁にはできませんが、ご要望あれば頑張ってみます。新鮮な鶏ガラスープにまた出会うために、まずは心の力を溜めておかなくちゃ」
 
この記事を書いた後、以前絞めて残っていた烏骨鶏丸ごとを解凍してスープにしようと冷凍庫を漁りましたが、もぬけの殻でした。固くてもなんでも鶏肉は好きなのですね。日を改めてご馳走準備をしたいものです。