勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

五月人形の勇ましさをどう考えるか

すっかり新緑眩しい季節になりました。

大きな鯉のぼりがはためくのを憧れを持って見つめる毎日です。うちにも息子がいるので鯉のぼりを堂々上げたい気持ちもありますが、生まれた時に購入したのは皐月人形でした。鯉のぼりを飾るには土地が要り、穴掘りのユンボが要り、ポールになる枝打ちした桧が要ります。そこまでしなくてもとお考えかもしれませんが、近所で見かける桧にはためく鯉のぼりがあまりにかっこいいので、私のイメージは「超立派鯉のぼり」で固定されています。孫の代に夢をつなごう。

 

ともあれ、五月人形の話です。

姉用のお雛様を片付けた後、息子の皐月人形を入れ替わりで出すのが毎年の習慣で、その頃は部屋の一角が一気に和風になります。どちらもそんなに大きなものではありませんが、どんと箱に入っているので飾ってあってもなくてもそれなりの存在感ですね。

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鯉のぼり(立身出世)にカブト(勇将のイメージ)に菖蒲(勝負)の花にと、皐月人形は勇ましさを詰め込んで作られています。我が家の人形はちっとも戦う気がなさそうな優しい雰囲気の子なのですが、一般には明らかに強そうな桃太郎のような人形のほうが圧倒的に多いです。先日訪れた松阪市の陶器市にもこんな人形がありました。

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楽天市場でもありましたよ。

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 こんなのも可愛い。

 

大きさもちょうどいいし、陶器なのに艶やかで、でも温かみがある作りでぷっくりしていて、可愛らしいですね。いかにも勇将を目指す無邪気な子供という雰囲気です。

すごくかわいいなぁと思うと同時に、強そうだなぁ、でもちょっと勇まし過ぎるかなぁ、と引っかかってしまいました。息子のキャラにもよるのですが、それだけでなく令和の親心は複雑です。子供には心の強い人であってほしいとは本気で願っていますが、バッタバッタと敵陣に切り込んでいってほしいと願っているわけではありません。明らかにリーダーの素質があったらそうなればいいと押し出してやりたいですが、人の役割は様々です。強さ、賢さ、明るさ、優しさ、面白さ。どれか一つでも磨かれて揺るぎない持ち味になれば、めっちゃいいです。どれもなくてはならないことはなく、欠けているところがあっても構わないです。

 

女の子についても引っかかることがありました。

娘の雛飾りを毎年しまい遅れます。その時ふと「いきおくれる」という言葉が出てくるのですが、口をついて出てからはたと立ち止まりました。今の時代、早く嫁がせることになにか意味があるのでしょうか。歴史を背負うほどのお家柄というわけでもないと思うのに、嫁という漢字も微妙なことの一つ。家の女、て何やねん。でもよい女と書く娘という漢字は好きなので、引っかかりはとても自分に都合が良くていい加減だなぁとも思いつつ。

 

さりとてお雛様を早く仕舞わなければ、嫁に行くのが遅くなる?

勇ましい五月人形を飾らなければ立派に育たない?

人形を飾りながらしまいながら、どうも古く固まった考えにとらわれていないだろうか急に気になった令和三年度です。

 

親が子供にしてやれることとして、奮発して節句の人形を飾り、健やかな育ちを願う習慣はかなり大事なことだと思います。子供をおおっぴらに大事にする親の動きは、子供にとって誇らしいので。けれどそこに刷り込まれた願いをふと取り出してみれば、なんだかなぁと思うようになってきました。

 

いえ勿論私とて、娘たちは嫁に行くな、息子はいつまでも甘ったれであれと願っているわけではありません。むしろ子供たちには、前向きに楽しく子々孫々をつないでいってほしいと願っています。結婚しろというより、私たち両親がいなくなった後でも子供たちがすっかり寂しくならないようにメンバーの入れ替えが必要だと思うからです。古い家族に終始せず、新しく大切な存在を育んでいってほしいとは思っています。

 

ただ、その形は嫁ぐや娶るという在り方でなくてもいいと、真面目に考えるようになりました。まだまだ早いですが、上の子はもうすぐティーンズの仲間入りで、その後の成長はあっという間だと常々聞いておるので、いざとなったときに浅はかな考えで子供を傷つけることのないよう思考の予防をしておくのが、チキンな母の精一杯です。

 

息子に関しても、勇ましくあれば報われるとは疑問符だらけです。

今の時代、男の子を育てるのは本当に難しいことを実感しています。明るくて優しくて気が利く人物なんて、そうそう簡単には育ちません。清潔で礼儀正しくて細マッチョで話が面白くて更に一途な男なんて、どう育てればいいのでしょう。どんな母であれば、幼少期に学童期に思春期に、どんな環境でどんな願いを込めてどんな接し方をすれば非の打ちどころのない息子となって、素敵なお嬢さんとの運命の出会いが約束されるのでしょう。途方もなくて口から魂が吹き出しそうになりますね。

 

強いだけでもいけないし、優しいだけでもいけない。どちらも備えてかつ見た目の良さが求められる厳しい市場に可愛い息子を送り出さなければいけません。いずれは。

そうしなければいけないこともないのですが、いつまでも手放さないのもお互いのためにならないとは真剣に思うし、どうにも信頼に足らない我が愛息を、しっかり者の女性に管理しておいてほしいというのが正直な負い目です。ドウカオネガイシマスヨー

 

というわけで、五月人形に込める願いは以下

これ以上はおこがましくて、不相応です。

・和気あいあいとした雰囲気

・それなりにしっかり立つ姿

・未来を生き抜く芯の強さ

こんなところです。いつの時代も親の願いは厚かましくて、それゆえ子育てはなににも代えがたい楽しさがあるのです。昔の親が、息子に勇ましく育ってほしいと思った気持ちを想像しながら、令和の親の願いをくっきりと。

 

気持ち良い風に吹かれてしっかり泳げよ、と近所の鯉のぼりに声をかけます。


まあそこまで考えた上で、そして次にほしいのは組木の五月人形。人気商品で手に入りにくいですが、毎年チェックしてしまう温かみがありますね。

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結局おもちゃがほしいだけなのか。

親心は案外浅はかだなぁと自覚するのも、いい機会なのですよ。