勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

高校生サミットを共有できた強運!

三重県教育委員会が主催されている「高校生地域創造サミット」なるものがあるのですが、2021年度は松阪市の飯南・飯高地域で2日に渡って行われたのです。毎年地域を変えて、全三重県から集まった66人(実際は64人だったそうな)の生徒が、サポートの大学生や職員たちと共にその地域でフィールドワークをしたり他校の生徒とディスカッションをしたりして、地域の課題解決や活性化を高校生として考えるという取り組みです。一泊二日で班に分かれ、沢山議論をして意見交換をして考察を重ね、その内容を該当地域の市町長に提言するまでがひとセットです。

 

https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/amp/detail.page?IMNEWS1=2991896

 

この地域でのサミットは2020年度の予定でしたが、やむを得ず開催中止となり、2021年度にドキドキしながらも担当者さんたちと関係者さんたちがあきらめずに計画を進めてくれたおかげで、無事開催の運びとなりました。直前になってこの地域では珍しく雪ということになり、最後までハラハラでしたが、それもまた結果オーライになるのでしょう。

 とにかくそんな機会があり、飯南・飯高地域の高校生フィールドワーク先に亀成園も選定してもらったおかげで、県各地から集まった活きのいい高校生たち(魚市場か!)に出会うことができました。選定されたフィールドワーク先は8コースでした。

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香肌峡で感じて学ぶことはこれからの人生でどんな意味を持つのかな。

他の行先がどれも素敵なところなのでざっと並べてみると

・高尾畜産:飯南地域にある松阪牛の肥育で有名なところ。伝統とブランドにあぐらをかかずに地域活性に向けて堆肥循環などの取り組みもされているところ。

NPO法人isierra(アイシエラ):飯高飯南でカヌーや登山などのアウトドア活動を通じて豊かな自然とそこで生きる人々との交流を発信し続けるところ。

・深緑茶房:茶どころである飯南にあり、上質な緑茶はもちろん喫茶も人気で、地元の飯南高校と抹茶ラテアートに取り組んでいたり、発信活動も力強いお茶伝道所。

・かじ安大徳とマルハ林業:鍛冶と檜皮加工という職人技に出会えるところ。飯南での起業も応援してくれる懐の深い職人さんがいるなんて、是非私も行ってみたいところ。

・めぐみ:飯南の有名な猟師さん。猟を通して自然の恵みと共にある豊かな暮らしを体現されている。元シェフさんなので、肉さばきが早く美しいことも自慢(勝手に)

・叶林業合名会社:飯高地域の多岐に亘って山の管理をし、地域の小学生から高校生まで山の教育活動も行ってくれているところ。木の授業はとても楽しい!

・もくいち・マルゴ株式会社:飯高におしゃれな木のギャラリーを構え、上質な木工作品から無垢素材の板までまとめて木を扱う工房+発信基地のような素敵なところ。

 

だいぶ私的感情入ってますが、亀成園以外のフィールドワーク先がどれも参加したいところばかりなので、紹介しておきたかったのです。この地域で生きて、何歩も先を行く素敵な人々と、三重県各地からの勇敢でラッキーな高校生が出会えたことがなんだかとても嬉しいのです。みんなどんな学びをしたのかとても気になりますが、こっちはこっちで伝えること、渡す心や言葉があるはずです。一番遠いところを訪ねてもらったこともあり、がっかりさせないよう精一杯出会いを楽しませてもらいました。ちなみに8個のどの班にも地元の飯南高校の生徒が入っています。今月半ばに本人から亀成園にも電話連絡がありました。「お手伝いできることはありますか」と聞かれたので「ノリよくしてくれたら助かります」と返事しておきました。期待に応えてニコニコしてくれていましたよ。

 

フィールドワークでの班は全員違う学校で、初対面の子たちばかりです。ちなみに議論する班とも違うメンバーだそうで、それぞれのフィールドワーク先から議論班に集まることになります。いまどきの初対面の高校生たちがどんな雰囲気かなぁ思っていたら、バスから降りてきた子たちが予想以上に和気あいあいとしていたので驚きました。薪ストーブ(新設!)のついたゲストハウス亀成園に入ってもらい、挨拶などしてもらいましたが、どの子もしっかりとした受け答えでまた驚きです。コミュニケーション能力が育っています。自分からサミットに応募して飛び込んで来た子たちなので、仕方なくやらされている感がちっともなくて、これはしっかり手渡すものが必要だなと思いました。なので最初の活動紹介でもレジュメ(亀成園の暮らし方というタイトルで、仕事や役割などの紹介と、今後の野望などをパワーポイントで作り、余白多めにメモしやすいよう作ったもの)はざっと確認するだけで、「なぜこういう暮らしをしているのか」「地域とどうつながっているのか」などを重点的に話すことにしました。日頃考えていることがそのまま口をついて出てくるので、レジュメを軽視すると、ほんとうに能天気なセリフばかりになりますが、どれだけ前向きに楽しく地域と関わり、希望たっぷりに自分たちの人生を作り上げているかは伝わったでしょうか。

 

それから畑に移動です。雪が降っているというのに、園主も話を聞いてもらいたいですし、実際に土を踏むこと、作物を触ることがここでの体験なのですからね。畑と雪の写真、90度倒れましたことをお詫び申し上げます。

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大根を抜いて、麦を踏んで。何の野菜かすぐにわからないものが沢山あります。いつもは1時間くらい、話をしながら畑のあっちこっちでいろいろな野菜に触れてもらうのですが、15分で区切って次は鶏小屋です。こちらは畑よりは随分暖かいですね。鶏舎の床が発酵飼料の影響でほんのりぬくくて床暖房効果になっています。

 

手がかじかんでいるからこそ、生き物のぬくもりが有難いです。触ってみる、捕まえてみる、鶏たちの違いを感じてみることをメインに、いつもの沢山のウンチクは少なめに。ここは少し時間を長めにして、どの子も鶏との距離を縮めてもらうことに成功しました。亀成園のお姉ちゃんたちにもサポートしてもらいましたよ。子供との交流付きは高ポイントです。

 

それからまた暖かい部屋に移動して、ゆで卵の試食をしてから真剣な質疑応答でした。初めての場所で手を挙げて質問するのは本当に難しいのですが、やっぱり足を運んだからには、質問の機会を逃しては惜しいなと私は思っているので、沢山受け止める心づもりをしていました。話すより聞く姿勢で。そんなことできるのか、また新しいチャレンジでした。そしたらいい質問がたくさん上がって、役得でしたよ。

自給率7割について、今後の考えは?

・機械化については考えていますか?

SNSなどの投稿で意識していることは?

・子供に後を継いでほしいですか?

・何かもらったときとか手伝ってもらったときにすぐに返しますか?

 

など、普段よく聞かれることとはひと味違う内容でした。考えて答える機会に感謝です。

 

亀成園は自分たちの在り方が絶対だとはちっとも思っていなくて、いつだって挑戦の途中でしかないです。変えることはどんどん変えていくし、守るものは自然環境と自分たちの自由くらいです。そして今何かが不足しているとも思わないし、これからの時代はこうであらねばとも思っていません。ただ、いつもやってみたいことがあって役割があって、家族がいて地域があって人のつながりがあって、そのバランスの中で生きています。高校生地域創造サミットというものにも縁があって、それはたまたまなのか必然なのかよくわかりませんが、縁があったから受け止めて、できることをしている。大袈裟な使命感などはなくて、芯はありながらもゆる~い感じが亀成園の実態なのです。そんなことを織り交ぜながら、子供たちへの想いや集客の目的や方法、人とのつながりで大事にしていることなどをざっくり話すことができました。

 

あっという間に時間が過ぎ、かなり駆け足でしたが、楽しい時が過ごせました。

せっかく集ったからには「地域の課題解決!」と意気込みがちになりますが、拳を握っていても何をしたらいいのか思考が進まないことになりがちです。心を広げて掌も開いて、楽しくご縁をつないでいくことが、なんだかんだ地域の活性化になっているのではと受け取ってもらえたらとても嬉しいです。

 

それにしても、県の高校生を中心に100人規模集めて、主幹校など時間をかけて事前準備をして、複数のフィールドワーク先を探して連絡をとって当日の進行をして、ディスカッションをして発表につなげていく。教育委員会がこんな大きな仕事をされているとは知らなかったです。本当にありがたいことです。もしかしたらそのうち子供たちがお世話になるかもしれませんね。ちゃっかり私も付いていく方法があればいいのに。どんどん楽しくなる未来が微笑んでいます。

 

さて、松阪市への提言はどんなものになったのでしょう。そのうちまた情報が入るのが楽しみです。