勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

稲の種を比べる会

一昨年度に三重県発で数人の人たちが立ち上げてくれた「数あるコメの種を引き継いでいく会(という名前ではありませんが、その趣旨の会)」に幸運にも参加することができています。たまたま居合わせた場でそういう話が聞こえたので、いちおう米作りもする自然農もする一農園の立場として、とても興味がありました。その縁で仲間に入れてもらって、昨年度は上手に種をつなぐことができずに本当に申し訳なかったのですが、今年度はもう少し意識を上げて、深遠な米マニアの仲間に少しずつ近付いていきたいと思っています。ぼやっとしていますが人生の大きなチャンスに喰らいつけているなぁという感覚です。

 

亀成園園主はここ数年だいぶ力を入れて米作りをしていますが、規模も小さく、試行錯誤模索中という状態です。まだ完全自給も遠く、なかなか先は進めません。けれど米作りというジャンルを通して、人付き合いを深めていることが我が家の宝物です。稲作には沢山の関わり方があり、もっと沢山の考え方があります。食べたら同じ、ではなく、一粒の米との親密感が人の生き方まで変えていきます。

 

米マニアいう尊称を用いるのにふさわしい人たちっているのです。百科事典のように米を語れる人もいます。そんな複数の人たちと、めちゃくちゃ近くもないけれど、楽しくお話ができて、頭がパンクしそうになるほどいろいろなお話が聞ける機会に居合わせることができるということは、私にとって幸運でありとても大切なことです。たくさんの種もみを並べて比べて、あーだこーだと話をしてたくさんのことを分かち合って感じることができたことは、今月の素晴らしいことの中でもかなり大きな体験でした。

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多種多様の粒粒に囲まれた楽しい時間

普段流通している米はもうほとんどがコシヒカリになっていますが、米の種類って本当に本当にたっくさんあって、各地で受け継がれてきた種もみを絶やさずにつないでいくことは、農に関わるものができることの中でも相当大きなことなのです。米の育て方だけでも無数にあると言われており奥が深すぎる世界ですが、どこの土地でどんな米を育てるのかは人が選ぶことができるのです。勝手に育っていく雑草と違って人が食べるために育てる作物は、人の手で管理・生産されます。どの人がどんな思いをもって種をまき、育て、種を残していくのか、また種を分け合うことも人にはできるのです。

 

種はつないでいくものです。

つないでいけるものです。

 

亀成園の畑でも、毎年一番いい出来の野菜を選んで種を採ることをしています。種取が難しい野菜もあって、まだ完全に自家採取できてはいませんが、種を採って残していくことは、野菜作りの大きなウェイトを占めています。その話は「亀成園の畑体験」で園主の想いを聞くことができますよ。よくできた野菜をたっぷり食べたい私としては、一番大きなナスやニンニクやネギを自分が食べられないことに正直微かな不満を感じておりましたが、食べつくしてしまってはつないでいけないということは、北斗の拳で学びました。おじいさんが大切に運んでいた種もみが奪われそうになるシーンを思い出せる人もいるでしょうか。そう、種もみを残していくことが、子孫に対してできる農民の一番大事なことなのです。

 

種もみおじいさんをググったら、北斗市のお土産がヒットしました。

うん、この発想とビジネスモデル、素敵です。

j-town.net

 

真面目に種をつないでいくイメージは下記。

この本で「種はタダでもらっちゃいけないよ」というメッセージも頂けます。タダでもらった種はなんだかうまく育たないのだとか。種は金より大事だと私は思っていますが、きちんと価値交換して育てていきたいですね。

 

米の種交換会の話に戻ります。

今回お邪魔して種もみ交換会をしてくださったところは、野菜の種もバンクにして沢山の方に分けてつなぐ活動をしているところです。開拓者であり伝道師であり表現者でもある人が、割と気軽に会えるところに居てくれるなんて、たいした幸運です。本当にありがとうございます。

 

米はうるち米、もち米という大きな違いがあり

もっちりとしたもの、さっぱりとしたもの、形状にも差があります。

その中でも酒米に向くものがあったり

早稲、奥手といった気候や土地によって向く品種の違いがあり

インディカ米、タイ米といった括りがあり

白米系、古代米(赤米や黒米)などもあり

香り米というジャンルにも多種多様な種もみがあります。

 

今回数名で集まって持ち寄って並べただけでも、何十種類という種もみが並びました。一昨年に配布されてそれぞれが育てて種取をしてつないだものです。

主催者の方は種を配布し、その後、どんな状況で育てて水の状態や生育具合などを報告してもらい、リスト化するということをしてくれています。どの種がどこの誰に渡り、また戻ってくる。或いは一年目は失敗したけれど再挑戦していく。人のつながりで多種を育てている人の協力を得て、種継ぎ人を増やしていく。そんな大きな、けれどポチポチっとした取り組みです。

 

濃い色の古代米が好きな人

丈の好きな稲が好きな人

カレーに合う香り米がたくさん欲しい人

アーユルヴェーダとつながっていく人

 

米とのつながり方って自給暮らしとか食の根幹ってだけじゃなくて、なんだかとても楽しさ溢れるものなのでした。

 

生米をいくつか籾から出してかじってみることもしました。

ナッツの香りがしたり、渋味があったり、やけに爽やかだったり。

こんなに味の違いがあるから身体に与える影響も違うはずだね、それぞれの人のそれぞれのときにあったお米がきっとあるね、もういろんなもの食べずに米だけで完全食になりそうだね、と米マニアたちとの希望溢れる会話の楽しかったこと。

 

さて私はといえば、味や育ち具合、育てやすさなどももちろん興味はありますが

なんといっても品種のそれぞれの名前に惹かれます。農じゃなくて詩として。

 

ああ、その名前なんだか素敵。というところから入って、その米にはどんな歴史があるのか。どこでどんな食べられ方をしてきたのか、などを探っていくのはとてもとても面白そうです。

園主は3種類くらい分けてもらって、次の米作りの一角で種つなぎ活動をする決意をしました。戸隠紫という忍者のような名前の米を選んでくれたので、私も楽しみです。

私が個人的にバケツ稲で育てることにしたのは、さわのはなです。ささにしきの母種の母種という種類らしいです。すぐに教えてもらえるから人から受け継ぐことの価値は測り知れない。呼んだときにほわっといい気持になれる「さわのはな」。ここから向き合っていくことにします。

いきなり何種類もの種つなぎは荷重が過ぎますが、まずはひとつと向き合うことができたら、少しずつ未来は明るくなりますね。

 

いやぁ、季節の巡りがまた楽しみになりました。今回ありがたくご縁のあった種の学校もまたちょくちょく訪れてみたいです。ちゃんと行動する人として、導かれていきたいなと強く願っています。

 

古代米など米の少し深い話について、入門はこんな絵本からもいいですね。

健康志向の浸透により、古代米人気も高まるばかり。早めに着手して先陣切っているどなたかを尊敬します。飯高町でも古代米販売している人がいて、最近は下火ですがまた売ってくれるかな。穀物の深い深い世界に、少しずつ入っていっている幸運を噛みしめたいものです。

そういえば、種の学校の方は、長年自分が育てた米からおせんべいを作ることもこだわって取り組んでおられるそうです。洋菓子より和菓子、しかも素朴であるほど好きな私からすると、惹かれてたまりません。おせんべい作りの行程を聞くと、シンプルだけど手間暇かかるというかんじだったので、自分が取り組むのはうんとうんと先になりそうですが、米を思いおせんべいをかじる。そんな時間は気軽に大切にしたいですよ。