勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

冊子カハダヲタベルが刊行されました

昨年秋に一度触れたことのある、飯高町の地域を中心に、食べ物にまつわる話や昔の暮らしの話を集めて編集した小冊子『カハダヲタベル』が、この3月初めに飯高町内で各戸配布され、資金を出してくれた各住民自治協議会への事業報告会も行われました。

 

地域応援事業の一つとして、町内外からたくさんの原稿を集めて1冊にまとめるというこの本作りの話を聞いてから、なんだか面白いことになるぞとずっとわくわくしていました。応募原稿の他、ボリュームのある聞き書きや、カハダスタグラムというインスタの写真と散文を集めたページに、導入文や編集後記などを引っ付けて、当初の100ページ計画を大幅に上回るA5判144ページの本が出来上がりました。

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企画・編集とほとんどのことを川俣地域の一人のお兄さんがこなしてくれ、その周りを川俣地区を中心に、宮前や波瀬の女性メンバーと森地域の私という10人足らずで盛り上げて、楽しくことが進んでいきました。それが制作委員会です。なんだか映画を撮ったみたいですね。インスタも相互フォローし合い、ライングループも仲良くあれこれ。元々知っている方が多かったですが、この企画で初めて顔を合わせて距離が縮まった方もおり、女性たちがきゃっきゃと女学生のように楽しそうなのを、年少のくせに微笑ましく見ていました。共通の目的に向かっての世代間交流が、こんなに前向きに濃く行われる最中にいれるとは、何の思し召しだったのでしょうか。ありがたいご縁に恵まれていました。

 

途中までの経過は川俣サイトという住民自治協議会のHPに「かちむしレポート」として掲載されています。かちむしは前だけむいて進むトンボのこと。かつて武将たちにも愛されたモチーフであるかちむしが、カハダヲタベル制作のマスコットでした。

www.kabata.site

2020年7月に前段階となる「かばたをたべる」が配布されてから、すっかり1年7ヶ月が経過して、目標だった『カハダヲタベル』がやっとできあがりでお披露目されて、各地で喜ばれています。私もこれからあちこち配布活動をしなければいけませんよ。また素敵なご縁があるに違いないので。

 

とりあえず自分に馴染みがあるのは図書館という場所で、純粋に本を通じて人と人がつながっていけばいいなと思いました。市立図書館、県立図書館などの他に、私設図書館や私設文庫などもありますね。町中ライブラリーのようなコミュニティもそういえば興味がありながらまだ足を運べていなかったのです。この機会に行動することでまたあちこちに安らぐ場所や好きな人がつながっていくのかなと思ったら、わくわくが加速しますね。『カハダヲタベル』は地元の人のつながりが丸出しの、観光案内とも言えない、昔話でもない、でも懐かしい雰囲気たっぷりの、なかなか豪華な本なのです。制作側なのでもちろん贔屓目サングラスかけまくりではありますが、飯高町に縁のある人には喜ばれているというし、縁がなかった方で興味を深めて下さった方もいるし、これからの可能性が高い本だと思うのです。

 

だから、できる限りあちこちにそっと置いておくことを目指しています。飛び立て、わたしたちの『カハダヲタベル』!そしてファンを連れてまた帰っておいで。今はなんだかそんな気分です。卒業シーズンでもあることですし、巣立ちの生徒を送り出す教育者はこんな気持ちなのかしら。

 

『カハダヲタベル』は食べ物の話を軸にしていますが、昔の暮らしを語ってもらったので、戦時中のことや力を合わせて農業をしていた話、神社などの行事との結びつきや昔の道具のことなど、先人たちのいろいろな思い出が溢れています。原稿の書き手は無記名なので、どなたの思い出なのかはっきりわからないところが結構ありますが、だからこそ遠く離れた人が見ても、もしかして自分のおじいちゃんおばあちゃんの姿かもと共感を寄せることができるのかもしれません。私がこの冊子をなんだかとても好きなのは、おじいちゃんおばあちゃんを思い出すという理由もかなり大きそうです。全国のじじばばっ子、集まれーって気になりますよ。

 

制作終了後の事業報告会では、90歳になるおばあちゃんが作ってくれた栃餅の試食もふるまわれました。私も以前、小学校のファミリーイベントで最後のほうだけ作らせてもらったことがありますが、もうなんというか、手間のかかり方が違う、知恵の結晶のような宝の餅です。じわじわと広がるうま味は他に代えがたい美味しさがありますが、滅多に食べられるものではありません。学生時代に芦生の栃餅の話を聞いた時はそんなに心動かされなかったのに、飯高でこんなに想いが深くなるとは。人は細くともつながっている人の手からの食べ物で、完璧に幸せを感じられるものなのでしょうか。この本から興味を持って訪ねてもらうことで、移住促進にもなるという願いを、小さく燃やし続けます。一緒に豊かな食に囲まれて生きていきたいですね。

 

前段階として、聞き書きをひいこらとこなした後に書いた過去記事はこちら↓

誰にも知らせていなかったのですが、委員会の部長に見つけられて、別冊子に刷られるという名誉にあずかりました。

kamenarien.hatenadiary.com