勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

何十年経っても定演が好き

少し前のことになりますが、とても幸せなイベントがありました。こどもトランペットクラブという飯高地区の公民館講座の縁で、小学5年生から知っている子が現在高校1年生になり、吹奏楽部の定期演奏会があるというので、伊勢まで応援に行きました。

 

松阪市に来てから何度かその時々で、縁のある高校の演奏会に赴いたことがありますが、それもこの2年は叶わなかったので、今回は本当に久しぶりでした。生でホールで聴くことを切望していたことを、オープニングで思い知ることになり、本当に嬉しかったです。これから行事や移動がまた当たり前になってしまうと、ゲストハウス業としては逆に動きにくくなるかもしれないのもあり、想いを溜めて溜めてやっと行けたその定期演奏会は、本当に貴重な機会でした。

 

相可高校は食品科の「まごの店」などで有名な高校ですが、吹奏楽部も例年レベルが高く、中部地方のコンクールなど常連のようですし、楽しく魅せるステージに慣れている高校吹奏楽部です。人数はそれほど多くなくて30人いるかいないかなのですが、3年生がギリギリまで部活に参加できるようで、舞台から3年分の熱さがジリジリ伝わってきました。私は中高生の頃、自分ではかなり熱を入れて吹奏楽に関係していましたが、高2の冬でやめなければいけなかったので、未だに不完全燃焼感が続いています。この時代の活動なので心残りも多いでしょうが、高3の3月に演奏会に燃えられるとはなんてうらやましいとジリジリしましたよ。

f:id:kamenarien:20220322215846j:plain

金管楽器木管楽器、打楽器が吹奏楽の醍醐味

 

つい最近、恩田陸さんの蜜蜂と遠雷という、ピアノコンクールを長編小説に書き留めた傑作を一気に読みました。評判なだけあって、もう素晴らしい小説でしたが、ピアノ演奏家が何人も出てきてお互いが知っている曲を超ハイレベルで弾いていくのですが、基本的には孤独な世界です。師弟がありライバルというか認め合う存在があり、ファンがありアンチがあり、コンクールという競争社会を描くこともあって、天才ゆえの特権境遇もあって、孤独な上での類を見ない美しさがあります。

 

小説を一気読みしてから音楽が気になるとこんなかゆいところに手に届くものも。ひとつの小説によってクラシックに多大な影響があったこと、改めて感服します。

 

孤高のピアニストたちが挑んだ大きな物語も素晴らしいですが、

それに対して、吹奏楽は決して一人では成り立ちません。共演であったりソロを引き立たせることもありますが、基本的に合奏を前提の楽しみにしている音楽です。高音楽器や低音楽器やらが共鳴してこその良さがあります。

 

演奏家は独奏と合奏とどちらも楽しむことができます。もちろん個々の能力を高めなければ自分が満足してかつ聴く人の心を打つ演奏はできないのですが、己の演奏を突き詰めるだけでなく、共鳴し合って高め合っていくことが吹奏楽やオーケストラの喜びです。足し算ではなくかけ算になりますね。

 

部活に取り組んでいた時代、ややこしいこともいろいろあったなぁと思いますが、合奏はやっぱり本当に楽しかったです。挑戦を経てのコンクールも、集大成の定期演奏会も。私は打楽器だったので、曲によっていろいろな楽器に触れました。一つの曲の中でいくつもの楽器を移動することも茶飯事で、ほんの少しの見せ場以外は他のパートを引き立たせるために全体を見てリズム打ちをするのが好きでした。今は金管アンサンブルの地域サークルでトランペットを吹いていますが、メロディパートを引き立たせるサブパートとばらけそうになるリズムを整えるのが自分の役割だと思っています。縁の下になりがちな人生観はずっとありますね。

 

そんな私のことよりも、高校生の演奏の話です。

昼の部と夜の部で違う曲目もありますが、私が聴いた昼の曲はこんなプログラム

 

第一部のクラシックステージで

1.プロローグ・ワン

2.「ノートルダムの鐘」より

3.2022年度コンクール課題曲Ⅱ マーチ「ブルー・スプリング」

4.吹奏楽のための「海の詩・風の詩」

 

第二部のポップステージで

1.伝説の「女性アイドル」メドレー

2.交響組曲「シネマトリロジージブリコレクション

3.日本を勇気づける名曲メドレー

4.合唱「群青」

5.Sing,Sing,Sing 熱帯JAZZ楽団ver.

アンコール

 

といったプログラムでした。

第一部は重厚な演奏で、打楽器が目立っていて思わぬ満足感が得られました。

第二部はダンスや楽器パフォーマンスにそれぞれのソロなど魅せ場満載でした。

一体どれだけの練習をしたのだろう。どれだけ息を合わせて数えきれない葛藤を乗り越えてきたのだろう。どれだけの熱を注いだのだろう。

高校生たちが費やした時間やエネルギーが見事に発揮されたステージに居合わせることができて、ああ、とても幸せな時間だったのです。

 

舞台の高校生を見ながら、知り合いの子の成長に感激しながら、そこにかつての自分や仲間たちを当てはめたり、隣で座っていた娘(高校では吹奏楽部希望)の将来を当てはめたり、来世でやりたい楽器を定めてうっとりしたり、もういろいろと満足でした。

今世は小さな頃にピアノを習い、中高生では打楽器にのめり込み、ジャズも少しだけかじり、大人になってから下手の横好きでトランペットという音楽体験に満足していますが、来世はもう少し音楽の割合を増やしたいなとは思っていたのです。第一希望はオーボエだったけれど、やっぱり打楽器もやりたくなってしまったし、思い切ってチューバもいいかなと影響を受けました。ステージが好きだなぁ、合奏が好きだなぁ、学校も好きだなぁ。生の音が与えてくれた楽しさがまだまだ余韻を含んで響き続けています。

 

素敵な演奏会の縁をくれたY君に限りない感謝を。お母ちゃんとお姉ちゃんの趣味につき合ってくれる小さな子たちにも感謝しなくちゃね。