日本の小学校に関わって7年目になります。
松阪市で一番小さな香肌小学校から、無限の学びをいただいています。親子共が心から満足して公立の小学校と関われるとは、今更ながらなんて素敵なご縁だったのでしょう。
長女が小学校2年生の途中からで、今年度4人目が入学しました。
少ない児童に占める割合といったらそれはもうなかなかのもので、それでも全部は把握しきれなほどの体験学習をさせてもらっています。
ホームページにもあるように、香肌小学校の大きな特徴としては
・自然に囲まれた環境
・豊かな体験教育
・地域の人とのつながり
・きめ細やかな教育指導、配慮
・実は先進的な英語やICT教育
などが挙げられますが、
・児童同士の距離感
・児童と先生方の距離感
・保護者同士の距離感
というのも、なかなかどうして素晴らしいところだと思っています。
もちろん児童によって、保護者によっての違いはあれど、全体としてゆるく仲が良く、礼儀正しいというのが香肌小学校の特徴なのです。
そしてそれを支えているのが
【複式学級の存在】ではないかと思っています。
複式学級とは、複数の学年が一つのクラスになることで
単式学級とは違い、いつも少し上の学年や少し下の学年を身近に感じながらの学校生活になります。学年ごとの教育課程というのはあるので、全部が同じ授業なわけではなく、生活や図工などは同じ内容を学びながら、算数や社会などは学年ごとに分かれるなど、先生方がパズルのように工夫を重ねて授業をこなしてくれます。
国語や算数は積み上げ科目なので、1年生から順番に習っていかなければ身に付きにくいですが、音楽や道徳などは6年間通じて何を学習したのかをカバーしていれば、順番の入れ替えは可能です。3,4年生の社会も同時に学ぶことができます。先に4年生の内容を学び、次の年に3年生の内容を学ぶというスタイルでやれば、社会見学なども複式学級で出かけることが可能です。でも確か5,6年生は理科も社会も分かれていました。その場合は専科の先生に入ってもらって教室を分かれての授業になります。
そして複式学級名物とも言われる「渡りの授業」というものが国語の時間に行われています。
どういうことかといえば、同じ教室の前と後ろに分かれて他学年が陣取っており、先生は前後2つの黒板を使って、同時に授業を行います。
そうなると児童が先生から聞くのは授業時間の半分となり、残りの時間は自分たちで授業を進めるということになります。ちんぷんかんぷんですかね?
もう少し追加すると、例えば国語の場合、先生が片方の学年に教科書を読んだり課題の説明などをしている間、もう片方の学年は与えられた課題について話合っていたり、大事なところをノートにとっていたりします。授業の係が決められていて、それぞれに意見を求めてまとめたりもします。漢字の練習のこともあります。
しばらくして、先生が交代して、「どうでした?」と尋ねたら係の児童が話し合ったことを報告したり、分からないことを質問したりします。もう片方の学年はその間また自分たちで進めておきます。
私も何度か参観で見たくらいで自分が授業を受けたことはないので実感があるわけではないのですが、先生も児童もすごいなぁとめちゃくちゃ関心した想いが熱いです。
複式学級の国語では時々お互いの授業を発表する機会もあります。詩の朗読とか劇仕立てとか、演じる側と観覧する側に分かれて共有することができます。
上の学年の子は、あの単元去年やったなと思いながら、下の学年は来年はあの詩か、などと想像しながら、刺激を与えあいながら、複合的な力が身についていきます。
低学年では算数でも「渡りの授業」があり、九九の練習なんかは自然と耳に入ってきます。上の学年の子にとっても、既にできるようになっている下の学年の勉強を聞くと、脳がリラックスするらしいので、自分の課題に取り組むときにもいいのだとか。これも経験者ではないので実感はありませんが、無関係のものに気を散らすより、気を散らすと別の授業というのはなんだか面白そうです。
香肌小学校の子は将来的に勉強ができる子がけっこうおることも事実です。もちろんみんながというわけでなく、どんな子も受け入れる柔軟性の高い学校ですが、
これって複式学級と無縁ではないかもしれません。
複式学級を導入するということは必ず少人数です。一人一人の役割が大きいです。
確か目安は2学年合わせて16人です。
自分の意見をまとめて発表したり、他の子の意見を聞いて納得したりという機会が圧倒的に多いので、それが学力と結びつくと強いです。
複式学級は他学年が一つのクラスでありながら、学年の課題はそれぞれが学んでいける学級単位です。準備を2学年分しなければいけないので先生の負担は大きいですが、児童の主体性を伸ばしながら丁寧に指導してくれていることをよく知っています。力のある先生であることは、児童にとって勉強することを安心してできる大きな要素になります。
もう中学校になった上の娘に聞いてみると、確かに中学校は同級生が増えて面白いことも多いけれど、他学年と話す機会がうんと少なくなったそうです。中高生の頃は特に学年の上下関係があることもありますが、小学校時代に当たり前に一緒に異年齢が協力して日常を過ごしていたことは、大きな意味を持ってきそうです。
デメリットとして、少人数では社会性が身につかないと言われることが多いです。ですが35人学級の児童が社会性が身についていて、小規模の児童は非社会的であるかといえば、実感として全然そんなことはありません。35人いても仲良しは数人で後はほとんど知らない子というより、気が合う合わないに関わらず、協力せざるを得ない小規模学級の方がよほど社会性が身につくのではと私には思えます。まぁ、このあたりはどうしても贔屓目が入ってしまうので大きく主張はできませんが、闇雲に「複式学級のような小規模校では社会性が身につかない」という断定には大きく意義を唱えたいです。
異年齢の子と当たり前に協力する
遊びは自分たちにやりやすいルールを必ず工夫する
誰もサボることなく学校生活をこなす
あれ、なんだか社会性の塊になってないですか?
そんなこんなでどうも魅力的な複式学級
これから増えてくるのか、そうならないために学校が統合されていってしまうのか。
惹かれる直観が来た方は、どうぞ確かめに来てみて下さいね。