勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

山を歩いてみるとわかること

 晩秋から冬に変わる空気の澄んだ日に、再び山案内をしてもらう機会がありました。

山の見かた、捉え方、歩き方、林道の付け方、里山の人々と山の関わり方などをおおらかにわかりやすくレクチャーしてもらいながら歩ける至福のひと時でした。

 

前回の山歩きや飯高町のことを未来を見つめてまとめた記事はこちら↓

kamenarien.hatenadiary.com

 今回の山歩きは、地図を見ながら尾根と谷を足の裏で感じて歩くという、シンプルで実践的な学びを伴うものでした。前回は木がメインで頭に入ってきましたが、今回は地形です。生えている木のこともまだまだ知らなくて知りたくて頭に入れたいけれど、地面と触れている足の感覚をフルに開かせてちょっと静かに歩きました。

 私がお散歩を提唱するときに掲げている言葉のひとつに、

「歩くと頭が軽くなる」があります。じっと動かずに頭でっかちになっているとなんだか重くなりますが、歩いてみて考えすぎないようにすることで、頭も気持ちも軽くなっていき、却って考えがクリアになるということを日々実感しています。座学とフィールドワークでは動きながらの学びの方が後々に残りますしね。

 というわけで、歩きながら学んで体得する機会を山で実感できることは、とても理にかなったお得なことです。是非実際に歩いて感じてみなければ身体に軽く入ってこないので、サラッと記録に留めます。

いつだって土と水の上に生きている

 山の地形はいつだって凸凹です。登りか下りか、尖りかくぼみか。平らなところはまずない。急傾斜のときの上り下りは強く意識しても、ゆるやかな地形を歩くときは案外無意識に上がったり下がったりしてしまいます。でも足は知っています。今足先が上を向いているのか下に向かっているのか。足の裏も知っています。今いるところが尖って乾いているのか、くぼんで湿っているのか。尾根歩きと谷歩きでは足の感覚がまるで違って、足の感覚を鍛えると、山で自分がどこにいるのかわかるのだと。とっても方向音痴な私には憧れてやまない感覚です。でも、今回意識して歩いてみて、尾根の感覚と谷の感覚は違うことを実感できたので、もしかして方向感覚も身に付けられるのかもしれないという希望は持てました。平地では迷子になり放題でも山では迷わない。いつも私を囲んでくれている山々がより一層頼もしく温かく感じられます。

 

 さて、地形がわかると歩き方がわかります。山のどこをどう通ったら人にも山にも一番無理なくやさしいのかを学ぶと、山に道をつけることに近付きます。山に道を付けることは野生では必要がないことかもしれません。けれど山を生産現場とする人の営みには通る場所を決めておくのは必要なことで、適切に道を付けて手入れをしていくことが山管理の肝になる、のだと教わっています。搬出のために突貫工事をして目的を果たせば終わりといういわば雑な道の付け方も実際行われてしまっていますが、山の未来を考える林業の仕事としての道作りは、ずっと使える大切な道でなければならないのです。

 私もまだまだ感覚が通っていなくて言葉足らずでもあるので、北海道の自伐型林業家さんの発信で補ってもらいますね。

portal.hokuryu.info

 高知県林業家さんのnoteにもさばさばとわかりやすい山と道の記述がありました。山と共に生きる人たちの発信や意見交流はとてもとてもためになります。

note.com

 林道、作業道、登山道と山の道にもいろいろあります。簡易舗装の林道などは誰でも通れる道で生活道としても使われることが多いですが、作業道は基本的に林業のための道なので、勝手に入り込まないよう一般の人は意識しておかなければいけません。作業のために工夫して苦労してつけた財産の道なので、山歩きは登山道に頼りましょうね。

 登山道もまた誰かが作ってくれて、管理してくれている道です。世間のしがらみを離れて自然に触れるために山を訪れる人は多いですが、そんな時も山に関わる人々のおかげさまで歩くことができるのですね。山の学びとは逸れますが、どの山も誰かのものであるというのは大事なことなので、記述しておきますね。

 

 山を歩いている時に地形と同時に意識しておくといいのは、水の流れです。

 山に木が生えているのは、根っこが水とつながっているからです。土と木が一緒になって水をつかまえていてくれるおかげで豊かな緑の風景になりますが、雨の通り道や地下水の道などを水の見えない時にもわかっておかなければ山の管理はできません。

 土砂崩れ、地盤沈下、山体崩壊

大きな自然災害に思えますが、原因は案外人々の勉強不足にあることも多いです。

 山に守られて水に恵まれて生きていくためには、地形と水を知らなきゃいけませんね。その時は乾いて見える道に雨が降ったらどうなるのか。大雨が降ったらどうなるのか。地形を見て土の様子を見て、適切に判断して道を管理するのも林業の仕事です。

 わぁ、どこまですごいんだ、林業家さん。そういう目で山を見て道を見ていくと、ああ、人ってすごいなぁと感心せざるを得なくなって、なんだかとても嬉しいのです。

 

 水の流れのこと、土のこと、山に残された人の暮らしのことなど、もっと多くの学びがありましたが、実際歩いて感じてみて欲しいので今回は出し惜しみです。書かずにちゃんと覚えていられるかな。こぼれ落ちたものをまた捕まえに、一緒に歩く機会があるといいな。靴さえあれば山歩きは楽しいです。楽しく、そして深い学びを。どうぞ山に呼ばれて下さいね。

 道の話が中心だったので、本の紹介も一つ。

富山和子さんの「○○は生きている」シリーズの中で、何年か前は一番わかりにくかったのですが、農村での人々の暮らしをずっと感じていると、これこそ知りたかったことだなと気付きました。

※このリンクはAmazonアフィリエイトになっています。