勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

人間関係と自身を整える12月

 移住促進の活動をしていると、「今までの暮らしを変えて田舎に住みたい」という人と話をする機会がよくあります。そりゃそうですね、何かを変えようとしているから移住が選択肢に上がるのです。人の動きは大都会からだけでなく地方都市からのこともありますが、明らかにこの地域の田舎っぷりとは比べ物にならない人混みの中で暮らされていて、子どもの学校と合わないとか人の少ないところでリフレッシュしたいとかの思いは大なり小なりあるようです。

 私自身もここに至るまでは子供たちが動き回る時に周りの人に気を遣わなければいけないのが苦しかったし、交通量の多いところでずっと子供を見張ってなきゃいけないことにも違和感がありました。のびのびしたいのは親のほうだったのかもしれませんね。

 

 そこで夢見た田舎暮らしに飛び込む、ということになりますが、もしかしてポツンと一軒家のイメージがあるかもしれませんが

「田舎暮らしって人間関係は密よな」と後から気付くことになるのです。

 

 ほとんどみんな顔見知り、は私にとってはまだ言い過ぎだし、お顔とお名前が一致していないことはお互いにあり過ぎて、とてもとてもみんな親戚のようなものとまでは言えませんが、確かに顔見知りは多いです。広い地域のあちこちに知った人が居るので、どこかに行けば誰かに会うというのも当たり前だし、友達の友達はやっぱり友達ということもよくあります。それに加えて、近所の方とのつき合いもゆるく穏やかに郷に従ってというのが移住者の心得だと思っています。

 

 移住促進活動をしている地域なので、移住者の受入には寛容なんでしょと思いたくなるのはよくわかります。でも移住者って好き勝手に暮らしたい人が多くてその辺の融通も利くんでしょというのは間違いです。

 移住者が新しい地域に飛び込んで行くのも勇気ある行動で、ぜひ楽しく蘇って欲しいと願う気持ちと同じくらい

 地域の人にとって移住者は侵入者でもあるから、地域の人の暮らしに敬意を示して、礼儀正しく柔軟であって欲しいと願っています。

 

 先住移住者としてお話をするときは、緩衝材となれるように、顔つなぎなどできる限り一緒に考えて動けるように、人々の間をゆるく動いていくのが私の役割でもあります。もっと適役の人につなぐまでの、第一つなぎですね。卵屋らしいです。

 

 移住促進は地域活性化のため、村落が生き残りをかけた取り組みであるのですが、元々地域で暮らしてきた、ここを故郷とする人たちのためにならない取り組みになってしまってはいけないのです。

 

 6年半ここで暮らす私たちが、この場所に縁があったのはその更に3年前です。何の前触れも縁もなく不動産を購入して移り住もうという家族の噂を聞いて、地域の人はざわざわと大騒ぎだったそうですよ。1年程週末移住をして、保育園の下見もしましたがその後2年間海外赴任となり、家を空けてしまってまた不信感も募ったことでしょう。

 だからその後、定住を目指して暮らし始めてからは、自分たちのしたい暮らしを創り上げていきはするけれども、ご近所さんとはうまくやろう、地域と早く馴染めるように謙虚に暮らそうと決めて何年も過ごしてきました。人が集まるお祭りなどは積極的に顔を出して挨拶するようにし(餅まきなどお得なことのほうが多かったですが)、まずは紹介してもらったところでパート勤めをして所属場所を確保もしましたし、公民館のクラブ活動に子どもと入って、文化祭に関わってきたりもしました。そしてこの人脈は今でも強く効いています。

 

 全くの新しい住民が地域に移り住んで来て、わりと早く受け入れてくれた人もいれば、なかなか遠巻きな人もおりました。どんな噂なのか勘違いや思い込みでレッテルを貼ってこられた方も当然おりました。なわばりを尊重できていなかったこともありますし、挨拶の順番を間違えたこともあります。そんなに怖がられるとの認識がなかったのでびっくりしたこともありますが、わかってみれば何も不思議はなかったのです。確かに私は地域への侵入者だったのですから。保証してくれる人が誰もいない中、地道にコツコツ明るく柔らかく、信頼を築いていく必要がありました。

 

 現在、草取りをしない農法(自然農)ができていたり、雄鶏もいる養鶏をしていたりが許されているのは、ご近所さんの温かさのおかげであります。子どもたちの通学など見守ってもらっていることを知っていますし、たくさんの噂話があって、地域の人々のいろいろな想いを知っています。情報交換を密に、どこの子もまとめて地域の子として可愛がることができるのは、わりと時間をかけて人間関係をていねいに築いてきたおかげなのです。これから新しく移り住んで来られる方のことはとても楽しみですし、地域にとっていい影響があったらいいと心から願っています。都会からの行動力抜群の人たちにとってみれば、ガラパゴス社会かもしれません。意外と進んでいるかもしれません。文化の違いは当然あるし、自分の常識は誰かの非常識であると感じることが何度もあるのでしょう。嬉しいけれど怖さもあるのはお互い様です。

 

 いろいろ失敗もしてきたし、たくさんあきれられただろうしギョッとさせてきただろうけど、おひとりおひとりと話をする機会やお願いしたり頼まれたりをマメに地道に積み重ねてきたおかげで、家族皆ご機嫌に人間関係で悩むことなく暮らせています。人生の悩みのほとんどは人間関係だと言われる中で、このありがたさは尊いものだと受け止めなければいけません。

 広い地域の中、少ないとはいえいろんな人がおられます。親しさも会える頻度も様々で、でもかなりの割合で「会えたら嬉しい人」です。幼児から80代以上まで、何をしているのかしてこられたのか実はほとんどわからないながら、あちこちに尊敬できる人やもっと話をしたい人がいるのはやはり幸せなことですね。それでいて踏み込み過ぎない程よい距離感で、ゆるく温かくつながっています。

 

 12月はいろいろ整理の時期です。つい出てしまう欲張りをそぎ落として、何事もすっきり整えていきたいです。大掃除よりは心の掃除のほうが簡単そうだなぁ。