講師のターンがやってきた

亀成園はゲストハウス立ち上げ前に、三重県の起業者養成講座を受講して、これまでにもたくさんの相談に乗ってもらってきました。
その縁で、細々ながらも県内でスモールビジネスを続けてきている先輩として、これから世の中に出ていく高校生に対して体験談を話したり、授業内でワークショップを行うといった役割リストに入れてもらっています。
毎年起業者養成講座の仲間の誰かが当たる講師の話が、今年度はうちに回ってきました。ちょうど私も狩猟者免許を取り、これから里山で獣害対策をどう向き合っていくかをまさに考えているところだったので、高校生にも話を聞いてもらう機会にしました。
街中の学校ではないものの、ジビエと聞いてピンとくる子はどのくらい居るだろうか。
仕事を自分で創るってことにどれほどの興味を持ってもらえるだろうか。
様々なワクワクとドキドキをごちゃ混ぜにしながら、ざっくりと資料を作って打ち合わせに行きました。
亀成園の当たり前は結構そうでもない
担当の先生は実はご実家が亀成園にとても近いというサプライズがありましたが、今私たちが当たり前に行っている自給率70%をキープしての暮らしは、かつてここで暮らしていた人にとっても「え?何でそんなことに?」という驚きの暮らしなようで、ものすごく興味を示してもらいました。
獣は近隣に当たり前にいるけれど、それをどうこうしようとは思わない。
確かにその反応はより一般的かもしれません。
だったらそれを踏まえて、興味を引き出し、心に引っ掛かる話にまとめ上げるのが私の役割です。
猟師ってどうやって生きていけるのか
獣害対策に立ち向かうことやジビエビジネスに必要不可欠な猟師ですが、現在猟師をして生計を立てている人はどれくらいいるのでしょうか。
純粋に狩をすることにのみ力を注ぎ、狩った獲物を金銭や必要物質などの価値に変えて一丁前に生きている人は? もちろん存在している可能性はありますが、現代社会で「猟師」の資格を得た人が人生安泰かというと決してそうではありません。ジビエを名物にしているレストランや業者さんと強い関係を結べてでもいないと、獣を買取なんて簡単にはしてもらえません。
獣害対策の補助金でそれなりの金銭を得ている人はおりますが、さてその狩られた獣はどこへ。
現在、日本の里山は歴史上でも類を見ないほど、鹿や猪の数が増えて、駆除対象になっています。それでもジビエはあまり普及しておらず、足りないのは猟師よりも設備と流通経路です。
ジビエに市場価値が付くことがきっと何よりの獣害対策です。
そんな思いを抱き、まだ道を踏み入れたばかりの私ですが、若い世代に伝えたいよう工夫を凝らしました。
猟師は一つの側面
狩猟免許を取っただけでは当然お金持ちにはなれません。
けれど獣を捌くことができ、土地があり食べるものと力があると、割合たくましく生きていくことはできます。その上でどれくらいの儲けが要るのでしょう。
仕事の創り方は資源を人が欲しがるものにすること
自分がどんなものを資源にできるのか。
それにはどんな付加価値が付く可能性があるのか。
自営で生きていくためにはそこをしっかり掘り下げる必要があります。
雇われるにしても、自分になにが求められいて、どんなことができるのかを見極めるのは双方にとってめちゃくちゃ価値があることです。
亀成園の場合は、自給暮らしを実践して得てきたことを体験コンテンツにしています。なかなか人気です。
宿のお客さんのターゲット層を見極め、その人たちに情報が届き、縁があって足を運んでもらったら、満足度を上げることをいつもいつも考えて動いています。
里山案内人として、四季折々のネタをいつも磨いています。
そこに加えて、猟師の仕事に付加価値を付けていこうと思うと、、、
地域は何を求めているかな
いい仕事は自己完結ではなく、周りの人にも良い影響を与えます。
迷惑なものを役に立つものに変えると、継続しての仕事になるのでしょう。
どれくらい獣害があって、どんな獣たちで、住民からは搾取をしない形で自分の骨折り損にもしないために何ができるのかを考えます。
もし獣害が減らせたら、田畑や林業にもかなり安心で、そうするとここで生き延びることができる人がもっと増えて、地域の価値が上がるかな。
ジビエビジネスに人の雇用が必要になると、働く場所が増えて、住民が喜んだり、新しい人が来てくれることにもつながるかな。
里山に獣が簡単に降りてこないようになると、交通事故も減って、より安心して暮らせるようになるかな。
獣害が進みすぎるともしかして住めなくなる集落になるけれど、ピンチをチャンスに変えたら、豊かに未来を生きていくことができるかもしれない。
仕事を創るのは具体的な行動をコツコツと積み上げることが大事ですが、そこに向かう情熱の泉は深く熱くていいのです。
そのほうが、長期間に渡って頑張る理由になります。
やっぱり気になるのはジビエの美味しさ
獣害対策をしようというだけではなかなかやる気スイッチは入らない。
その辺の獣をわざわざ捕まえて、わざわざ自分で捌いて食べる肉って美味しいのかな。狩ができるとどんな楽しみがあるのかな。
人の意識をくすぐるときは真面目な話ばかりでなく、簡単に気になるような話が必要ですね。
亀成園園主が猟師になって8年。これまでジビエとの思い出はわんさかあります。
いつも食べている鹿肉でのBBQで、たくさんの知り合いをもてなしてきました。お客さんが来る前日に獲れる、なんてことも何度もあり、山奥まで来てもらった価値の一つとして彩りを添えてくれていました。
高級部位をローストビーフみたいにして、さらに手毬寿司にしたものを、ポットラックに持って行ったこともあります。
我が家での人気は餃子です。鹿肉ミンチとニラだけのシンプル餃子はさっぱりしていて何十個でも食べられてしまいます。中国で暮らしていたこともあって、お祝いには餃子というのがほぼ自給で叶うのは有難いことです。
スジ肉をカレーにしたり、削ぎ落としを麺と食べたり、鹿肉はハレの日だけでなく、日常に根付いているところがすごく好きです。
深い話と感覚に響く体験を
今回の出前授業は2日間にわたるものでした。
初めは1日目に講義をして、2日目はワークショップとして生徒たちにジビエビジネスを考えてもらうことをしようとしていたのですが、なんと鹿の脚一本解体体験をすることになりました。
獣の姿から肉になっていく過程
亀成園では通年オプションメニューで提供している「鹿の脚解体体験」は、運搬さえできれば実はどこでも実行可能な体験です。
自ら興味を持って来てもらう人には深く興味のある話ができるし、猟場の案内などもでき、満足度の高い体験ですが、対象となる人はそんなに多いわけではありません。
授業や勉強会などに呼んでもらって出張で行う方が、今後の展開としては可能性が高いかもしれません。
そんなわけで生徒らの反応はどうだったでしょう。
触って、匂いを感じて、意欲が湧いて
1日目の講義ではうつらうつらしがちだった生徒たちですが(そりゃそうだ)、目の前に獣の姿があり、動きがあると、しっかり関心を向けてくれました。
25名ほどだったので一度に体験してもらうことは難しく、見えにくいや声が届きにくいなどの課題もありましたが、先生が誘導してくれたこともあり、かなりの生徒さんにちょっとやってみてもらうことができました。
皮付きの鹿の脚から皮をはがし、骨付き肉になったのを部位ごとに分けていきます。
生物と刃物を使うので、安全にはかなり気をつけますが、危険な動きをする生徒はおらず、積極性と譲り合いとちょうどよい仲間たちの姿を見せてくれました。
「お、俺からいきます!」と手を挙げる子、「あ、じゃあやってみます」と並ぶ子、「俺こういうのあかんねん」と宣言してたのにやっぱりやってみようかなとなる子、先生に指名されておずおずとやって来る子と、学校の授業ならではの様子が感じ取れました。
解体のその後
食肉にはもうほんと様々な規制があり、目の前で解体されたものを食べる、ところまで体験としてはできないのがとても歯痒いところです。
こちらとしては好きに調理してもらえるなら構わないのですが、そういうわけにもいかずね。
でもこれを機に、食べてみたいな、どうやったら食べることができるかな、と欲望を膨らませて欲しいです。
そうすればジビエがどれくらい流通しているのかいないのか、獣がどうなっているのかが少し興味を持ってわかることができるかな。
そのうち亀成園にも来てね
ご縁があったクラスの生徒さん、なんか面白そうだなと聞きつけて顔を出してくれた生徒さん、そんな話があったんだぁと後から聞く人たちや活動に関心を持ってくれるあちこちの人たち。
また改めて亀成園まで足を運んでもらえたら嬉しいです。
ジビエ料理の試作品があれば、自己責任で味見をしてもらえるかもしれません。
関心が高まって、この地域や別の地域でも、解体施設やジビエ活用の仕事が増えていくといいです。
日本の里山を美しく未来に残していくのにちょっと見過ごせない獣害というものをいかに資源にするか。
いつでも頭に汗をかいて、チャンスを伺って、野望を膨らませています。
出前授業で解体体験という面白いチャンスをありがとうございます。
また他の学校や勉強会でも声がかかれば出向きますので、どこかに届いていきますように。
今回の記事はnoteに書いたコピーです。
私個人のことじゃなく、亀成園にまつわることばかりを時々発信しています。
元々は卵の定期便につけていた毎月のお便りバックナンバーの記録用だったのですけどね。
新しく書く方が俄然テンション上がる私にはバックナンバーの書き起こしはなかなか進まず、別の活用を考えています。
いろんな媒体を保管し合っていけたら良いなと。
長々とお付き合い頂きありがとうございます。
