勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

みんながほしがるもの

今年の飯高町は何かが違います。ありがたいことに交流人口が増えてきたこともありますが、私が思うに一番変わったのは児童・生徒・保護者たちの服装です。

 

二年ほど前から飯高Tシャツというのが販売され、行事のときは着用することが去年から推奨され、熱心な保護者や先生方から少しずつ広まってきていたのが、今年大ブレイクです。

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表は無地のカラーTシャツで背面に「飯高」、ひらがなの「つながるこころ」で描かれているこのデザイン、元中学校教師の一人が手掛けたものだとか。ひらがな漢字は描けそうで描けないので頭が下がります。

 

普段は大人サイズの二色展開が道の駅飯高で販売されているくらいですが、今年はこのTシャツの申込書が学校から各家庭に配布され、地の色と文字の色が15×15ほど選べるようになりました。サイズも子供から大人までとにかくカスタマイズがきくようになったところ、夏からこっち、町内のどこにいっても飯高Tシャツを目にしないことはないくらいです。「つながるこころ」の影響で、今年は保育園運動会のテーマも「みんなの心をつなげる」でした。意識下で目にする文字の力は大きいですね。

長女は友達とお揃いで体育のときに着るため白地にしましたが、黒地に黄色文字や紺に白抜き、カーキ地にオレンジ、紅色地に水色、黒地にピンクなどなど、イベント時はみんな背中に「飯高」を背負っています。ちっとも強制ではないのに当たり前のようにご当地Tシャツを楽しむ住民に驚いてしまいました。色はバラバラなのにみんながご当地Tシャツ。そしてイベント時でなくても普段から着用する人も多いのです。何枚も持っている人も多いのです。あっという間に小さくなるのに幼児に着せている人も多いのです。

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愛用している人たちにしてみれば、気にいったデザインで着やすいし乾きやすいし便利だから、といった感想なのでしょうが、ご当地Tシャツを旅先でなく地元で購入して愛用する人が沢山いるというのは私にしてみればパラダイムシフトといっていいほど目を見張る出来事なのですよ。

 

私とて生まれ育った故郷を愛しているし、心のどこかはいつでもそこに在りたいと思っているけれど、もし故郷にいたままで行事のたびに、なんなら普段から「箕面Tシャツ」を着ていたかと考えれば、うーむ、想像しにくいです。散歩道で、スーパーで、職場で箕面Tシャツの人に会ったら「その色にしたん。いいやん」と声をかけていた気がしないのです。もちろんお祭りのはっぴや運動チームのユニフォームとしては違和感なかったでしょうが、普段着に老若男女ご当地Tシャツを愛用するなんてこと、あるのですね。

 

素材がポリエステルで汗を吸わないため、私がこの大人気飯高Tシャツを購入することは今のところなさそうですが、手持ちのTシャツの背中に「飯高」と書いてみたくなっているのが本音です。

 

「人はいい物を買うんじゃない。みんなが知っているものを買うんだ」という言葉を聞いたことがあります。日々いい卵を提供しようと頑張ってる名もなき養鶏家にとっては耳の痛い言葉だったのですが、飯高Tシャツの広がり方を見ていると、成る程と思います。ブームがいつまで続くかわかりませんが、このまままだまだ購入者が増えていけば、最も売れているご当地Tシャツとして更に知る人が増え、注文があるのかもしれません。

 

残された限られた住民とはいえ、滑らかに手を取り合って協力できる飯高町はなにかと住みやすい町です。もっと仲間が増えてほしい、子供が増えてほしい。そのためのきっかけならなんだってほしいです。ゆるやかに仲間を集められるツールにもなる飯高Tシャツ、せっかくなら天然素材バージョンも作れたらいいなと描いてみていますよ。