勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

飯高で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

共に過ごした本読みの時間

土曜日は慟哭の卒業式でした。我が子はまだ四年生なので普通ならあまり関係のないはずですが、今の六年生との離れがたさは筆舌に尽くしがたいものがあります。地域の人も参加してよい式だったので、堂々と涙活してきました。別れの寂しさと巣立ちの眩しさと、直接は何も言えずただ泣くばかりの無様さでしたが、見届けられてよかったです。こちらに転校してきてから三年間、ともに育てたことは娘たちにとっても親の私たちにとってもなんと幸運だったことでしょう。そんな思いをずっと抱いてきたので、コミュニティスクールボランティア活動にも心がこもります。


小学校で放課後20分程を頂いて、月に二回、読み聞かせの時間を設けてもらって半年程になります。二年生は下校時刻が早いので他の学年(一年生はおりません)とは別に月一回、三年生から六年生はみんな一緒に違う日に月一回のペースで取り組んできました。三人ないし二人の時もある二年生の場合は極寛いだ雰囲気で、幻想的な話や詩を選んで聞いてもらっています。グリム童話アンデルセンの他、世界の創生話や日本の昔話などを絵本でないお話でじっと聞いてもらったり、特に好きな絵を見せたり、『これはのみのピコ』という谷川俊太郎さんの遊び絵本を一緒に唱えたりしました。どの子もよく聞いてくれて表情がクルクル変わるのでいろいろ試したくなります。ことばあそびうた、も平仮名の容易な詩に見えて、理解が試される名作です。

ことばあそびうた (日本傑作絵本シリーズ)

ことばあそびうた (日本傑作絵本シリーズ)


 三年生以上は15人くらいになるので、ある程度大きめの子を想定した話をみんなで聞いて印象的になればいいなと吟味して伝えています。絵本も特に見てほしいのを二度使いましたが、あとは耳と心だけ使ってもらうようにしています。ちょっと古めかしい言い回しのときや表現が難しいかなと思うときは反応を確かめて、注釈を入れながら、はっきりとはわからないけど違和感なく聞いてくれているときはそのまま、15分ほど一気に話すようにしています。

子どもに語る中国の昔話

子どもに語る中国の昔話

中国の昔話をして、アンデルセンも話して、毎月ワクワクドキドキの挑戦に付き合ってもらっていきました。一気に聞くには割と長い時間なので、少しでもテンポを間違えると途端に退屈になります。私が話をわからないまま字面だけ追ってしまっても同様にちっとも心に響かなくなるので、読み聞かせの時間は半時間にも満たなくても、じっくり心の準備をしていきます。末娘をつかまえて練習台にもしています。途中で逃げ出したら題材を見直しです。気に入ってくれたら繰り返しになるので姉たちに見つからないように準備するのも一苦労ですが、そこは一方的利害でもいけないのでこっそり有難く練習を重ねるべしですね。


この時期にみんなで味わっておきたい話というのはポツポツ浮かんでくるのですが、六年生もいるうちにどうしても共有してみたかったのはサン=テグジュペリの『星の王子さま』です。小さな王子さま、ではなく星の、と訳されているのが日本の先人に感謝するポイントですね。

星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)

あまりにも有名な物語で、箱根でミュージアムにもなっているほどですが(残念ながらまだ行けずじまい)、ちょっと時間をかけて読んでみたことのある人はうんと限られるかもしれません。可愛い話と思って読み出すと意外にとっつきにくく、ある程度大きくなってからのほうが心に響くのにその時期に手にするのは照れくさくもあり。読書に関して私がカッコつけたがりだっただけかもしれませんが、大きくなり始めのころに素直にふと聞いてみたかったなと思ってきたのです。


子供心を失ってしまった大人への風刺、純粋な子供であり過ぎる王子さまと飛行士のぎこちないやりとり、王子さまと一輪の花とのヤキモキする関係、そしてキツネとの絆と印象的なシーンはいくらもありますが、児童と生徒の間の頃に響くテーマはきっと友情であってほしいと信じて、キツネとの場面を中心に読みました。


我慢強くちょっとずつ友達になって絆を結べば、他のどんな十万人の男の子とも十万匹のキツネとも違った特別な存在になる。あっという間の出会いの後キツネは泣くけれど、二人の絆は無意味なんかじゃなくて、小麦に用のないキツネがこれから先黄金に輝く麦畑を見るたびに王子さまの金色の髪を思い出して嬉しくなる。そんな特別なキツネと出会った後、王子さまは花畑の美しい花々を見て、その花たちは自分のたった一輪の花とはまるで違うことに気付くきます。ざっとこんな話で、その後一番有名なフレーズである「大切なことは目に見えない」につながっていきます。


初めてサラッと読んだだけの言葉の波が子供たちにどれほど響いているかはわかりません。でも確かに世界の宝物であるこの話をちょっとだけ共有できて、もしかしていつか思い出して再び出会ってくれるかもしれない。そうでなくとも一か所でも心に残っていればいいな、と小さな願いを込めています。これから先子供から大人にならなきゃいけなくなる時期です。試行錯誤して恋愛のすれ違いがあったり友情に悩んだりもするのでしょう。砂漠に一人ぼっちだと勘違いするほどの孤独と向き合うこともあるかもしれません。若い頃を過ぎた身には覚えがありますね。そんな時にふっと思い出して心を取り戻す物語があればいい。自分を見つけ直すことができればいい。


まあきっとそんな心配をしなくても立派に育っていきますね。巣立った子たちに感謝です。しっかり寂しさと祝福を味わったら、また残った子供達と一緒に次に進んでいかなくてはなりません。