勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

鳥の巣から子育てを学んだ記念日

今年を締める前に欠かせない日を振り返ります。


私はいつも飯高町の隣町である多気町の勢和図書館を利用しているのですが、入り口の情報コーナーにあるチラシをさらっとチェックすることにしています。図書館でのイベントや近隣のマルシェやお祭り情報など、日にちが合わず参加できなくてもどんな楽しみがあるのかなと想像をふくらませることができるし、行動のきっかけは一枚のチラシであることも多いのです。そうそう、香肌小学校の親子山村留学のチラシもさりげなくここに置いてもらっていますよ。必要な誰かの目に留まることを願って。


そんな中、これはとピンときて参加してきたのが、津市久居にあるふるさと文学館という、これまた素敵な図書館で行われた、絵本作家の鈴木まもるさんの講演会です。1215日のことです。講演会に先駆けて11月初めに整理券の配布があるというのでそのためだけに久居まで行くのは流石に気が引けたのですが、子供たちの試合があったことでこれは追い風と整理券をもらい、楽しみに楽しみに行ってきました。他に魅力的な海のイベントもあったのですが、30年も大事にしている本の挿し絵を描いてくださった方に会える機会が最優先です。


実際に会ってみた絵本作家兼鳥の巣研究家の鈴木まもるさんは、山で暮らして絵を描いてます、という温かい雰囲気そのものの器の大きなお人でした。ホワイトボードに即興で次々絵を描きながら、一番前の子供たちを指名して協力してもらいながら、鳥の巣の話、子どもが育つ課程の話、生き物の美しさなど、楽しく深く滑らかに、飽きさせることなく三時間語って下さいました。


なにせ長い講演でした。途中鳥の巣が子供達によって回された時以外はほぼお話を聞く態勢なので、小学生にはハードな時間だったのですが、しっかり付き合ってくれてまた子供に借りができました。有名な絵本作家さんとはいえ、絵本作家は芸人さんよりもマイナーな著名人です。何かの折に「この中で読み聞かせされている方」との質問に、すごい割合で挙手がありました。母親世代はほとんどが読み聞かせボランティアで埋まっていたのではないかというくらいです。つまりそういうマイナー志向の人々が集まっているもので、連れて来られた子供たちも親の感動を受け止めてくれる素地ができていたのでしょう。我が子も他人の子もよく頑張ってくれたなとじんわりします。


鈴木まもるさんは鳥の巣研究をされているので、鳥の巣の話をしてくださいました。鳥によって巣の形は全部違うそうです。私にはとても見分けがつかない似たような鳥も、巣を作る場所も素材も造形も様々で、親に教わるわけでもなく自分たちでこしらえます。中には自分で巣を作らず他の鳥の古巣を利用したり地面で直に抱卵する鳥もいますが、敵の多い小鳥にとって巣はとても大切で、種の継続に関わるので、時間をかけて丁寧にこしらえるようです。

鳥の巣の本 (絵本図鑑シリーズ)

鳥の巣の本 (絵本図鑑シリーズ)


鳥の巣を下から見るとわりとごちゃごちゃしていて適当な作りに見えるけど、中は本当にすっきり清潔に保たれている話や、鳥の巣はお腹にぴったりハマる丸い形になっていて、まさに哺乳類の母胎の中と同じである話、生まれた雛を献身的に世話してきた親鳥が、ある日全く餌を運ばなくなりながらも根気よく見守って巣立ちしていく話など、鳥そのものでなく巣を研究されてきたからこそ気付かれた話が盛り沢山で、しかもそれは鳥の話のようでいて案外私たち親子の関わりにつながる親しい話でした。赤ちゃん絵本も出されている優しい作家の手にかかると、生き物は美しく気高く温かです。

みんなあかちゃんだった (えほん・こどもとともに)

みんなあかちゃんだった (えほん・こどもとともに)


スライド写真もたくさん見せてもらいました。アフリカの電柱にかぶさった巣、建て増し建て増しして人の家より巨大になった集合住宅の巣、庭師鳥という種類の鳥がこしらえたプロポーズのための飾り、モンゴルにある羊毛を編み込んだ巣などです。羊毛の巣は実際触らせてもらうこともできました。もうフワフワの艶々で、現地では赤ん坊の靴下として重宝されているそうです。器を作ったり服を編んだり縫ったりという仕事は、脳と手先が発達した人間独自の仕事と思われていますが、むしろ鳥の巣を発見した人間が後から真似して技にしてきたのではというのが鳥の巣研究家の見解です。それも納得なほど、鳥の巣は精密な美しい作りをしていました。


講演の最後は、かこさとしさんに託された『みずとはなんじゃ』の制作話でした。20185月に亡くなられたかこさんが子供たちにどうにも残したい科学絵本として企画されていたものの、もう絵は描けない状態だったので、鈴木まもるさんに描いてもらった初の共著です。

みずとは なんじゃ?

みずとは なんじゃ?


幾つもの作品を同時並行で手掛ける作家さんですが、ほんの少したまたま空いていた時に打ち合わせをして下絵を描いていたら、もうそれが最後の打ち合わせになってしまい、残された仕事になってしまったそうです。だからこそ『みずとはなんじゃ』は鈴木まもるさんからかこさとしさんへのメッセージがいっぱい込められた絵本になっています。有名な『カラスのパンヤさん』のカラスたちやだるまちゃんと仲間たちが登場したり、『かわ』や『地球』といった名作科学絵本の構図そのままに鳥の巣や猫が描き加えられていたり、作家から先輩作家への尊敬と愛情に溢れたすごい作品です。


講演の後、サイン会もありました。これまた待つのは大変でしたが、自分たちの名前が鳥の巣で飾られた絵文字になるとは、思い付きもしませんでした。

f:id:kamenarien:20191226142403j:plain


鳥の巣研究から鳥をより深く学ぶようになった鈴木まもるさんは、恐竜にも筆を広げることになったそうです。のりもの絵本を柔らかく描いてくれて、男の子とお母さんをつなぐのに大きな役割を果たしてくれている絵本作家さんが手掛ける恐竜絵本は、きっと恐竜好きでないお母さんたちにも指示されるのでしょう。もちろんものすごく恐竜好きな私も楽しみですけどね。次から次に渾身の作品を出してくれている人に会いに行けた、令和の大きな記念日でした。