子供たちの小学校は12年前に三つの地域の小学校が合併して一つの学校になりました。合わせると松阪市の三分の一がこの学校の校区になり、それでもどうにも児童現象に歯止めがかからず本当に危機的な状況です。なんとか児童が増えてほしい。それには親子連れが移住してきてほしい。子供が育つ環境として、親ものびのび生きていける場所として、どれだけ自画自賛しても足りないほどの小学校区域ですが、子連れ移住促進は今のところ難航しております。こういうのは時間がかかると腹を括るものですが、発信やマッチングの難しさが見えるだけに苦しい思いです。問い合わせはチラホラあり、社会全体の意識は都会から田舎に向いてきているのでまだ芽はあるはずです。こっちの学校は楽しいぞー、っと蛍のメロディで歌い続けるだけではなんの効果もないかもしれませんが、こっちの学校は楽しいです、とにかく。
児童はまだ来ませんが、三つの地域の一つに今月初めから出没して、住民の喜びになっていた鳥がいます。なんとコウノトリです。
ヨーロッパでは昔から赤ちゃんを運んでくるとされる縁起の良い鳥。足にナンバーが付けられていて、この春兵庫県の豊岡近隣で産まれて、巣立ちして後に三重県まで飛来してきた個体だそうです。保護対象の鳥なので、人々の目撃情報によってセンターが追跡しているのだとか。でも動きの制限はないようで、県内をあちこち飛び回りながらこの地を自ら発見して来てくれて、台風を過ぎても飛んでいかず居着いてくれていたことは、地元の人に思いがけない喜びをもたらしていました。
サギより大きな鳥ですが、人を怖がることなく呑気に過ごしている姿が魅力です。餌はカエルやドジョウ、虫にヘビなどということで、刈り入れの終わった水田やその近くの畑に現れては地面をついばんでいます。お気に入りの場所がいくつかあるようで、地区の中の更に細かい地区をあっちこっち移動して、行く先々で住民を喜ばせていました。ずかずかと近寄れば飛び立ってしまいますが、そっと見守っていると隠れることなく姿を見せてくれ、歩いて道路を渡る時もあるようで、ハラハラドキドキ見る人を飽きさせません。
こんなに近くまで寄ることができました。鶴のように長い嘴は黒く、細い脚は桃色で、コウノトリは紅白プラス黒のめでたい色合いです。
毎日地域で目撃され、住民の活性エネルギーになっていたコウノトリ。今はまた松阪市の別の地に移動したようですが、大きな鳥なのでどんな場所でも生きていけるわけではありません。水が綺麗で餌が豊富にある場所。年中田んぼに水を張っているところは多くないですが、もし冬季湛水を実行すれば呼水になるのかもしれません。山間の地域で湿原並みに豊かな場所はどんなところなのでしょう。コウノトリにとって何がベストなのかまだわかりませんが、何度でも飛来して来てほしいですね。つがいになって繁殖して、とまで願ってはあまりに絵に描いた餅になりますが、そんな明るいニュースがあることを期待しています。
そしてコウノトリに導かれて児童が増えることを。素直に赤子を運ぶより手っ取り早く児童を願うあたり、私の腹も黒くなったと愕然ですが、希望はつなげておきたいですからね。
コウノトリによって今回炙り出されたことは三つです。
・住民は素直で気立てが良いです
・子供増加のニュースが待ち焦がれます
一羽で社会が変わるわけではない。けれど0と1の差は月と太陽ほども違います。自ら光を放つ地域でありたい。偶然か必然かのコウノトリ飛来によって、多分人々はしぶとくなったのです。