勇敢なる有閑なる優な感じの自由刊行。続

三重県松阪市の端っこにある飯高町で農的生活を営む六人家族のお母ちゃんです。縁もゆかりもない移住をご機嫌に続けていけるのは、尽きないチャレンジ精神と、おおらかな地域のおかげです。地域に支えられる子供たちとの暮らしや、ここで発見した限りない素敵なことを、ちょっとずつ発信していきたいです。

わたし、獣になっても大丈夫

節季は雨水だったのに、寒波の影響で降ってきたのは雪でした。寒い冬と言われていたこの冬ですが雪の機会はあまりなく、またきれいなものを見られて嬉しいひと時でした。車道に雪が積もると凍って危ないので、除雪作業を待って学校は一時間遅れになります。いつもより朝の一時間を余分に使える貴重な日。たいしたことはせず流れていく時間ですが、ゆったりとしていてなんだか「もうけもん」な気持ちがします。

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うちの犬は北海道犬という犬種だからなのか、雪には大喜びでとても犬らしいです。野原の雪に転げ回ってから身体についた雪を振り落とすのが最高に楽しいらしく、四季のうちで一番はしゃぐ貴重な姿です。楽しさが溢れすぎて雪の日の散歩はハイテンションになってしまって急に引っ張ることも多く、リードを持っての付き添いは一苦労ですが、愛犬が喜んでいる姿を見るのはとてもとてもとても幸せな時間ですね。

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その愛犬が水を飲むように積もった雪を食べるのを見て、末娘がなにかピンときたようです。

 

積もった雪を食べるって、冬山とかイヌイットのような暮らしでは当たり前のことで、食事の際には雪を集めて溶かして水分として使用します。水場を探す必要がなく、冬のキャンプの楽なところですが、日常ではあまり行いません。キャンプ場でも行わないか。コロナ渦の世界でだいぶマシになったとはいえ、大気汚染のひどい地域では降り積もった雪は既に汚れていて、澄んだ水にはならないし、多くの人は澄んだ雪のあるところには暮らしていないのですから。

 

けれどここは清流誇る景勝地域です。年に数回とはいえ積もった雪もきれいです。雪が降ったからといって水分として雪を集めることは日頃していませんが、その気になれば可能なはずです。愛犬が雪にかぶりつくのを見てスイッチが入った小さな娘も雪にかぶりつきました。冷たかったようですが、食べ終わって満足げに放った言葉が

「わたし、獣になっても大丈夫」でした。

 

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「雪を食べる子なんてうちの子じゃありません!犬小屋で暮らしなさい!」と私が怒ったわけではありません。自発的に自信をつけたようです。誓って「野蛮な子は出ていきなさい!勝手にしなさい!」と追い出そうとしたこともありません。寒いからおうちに入ろうね。温かくしてようね。と優しく気遣っているというのに。

 

それでも野生に惹かれる彼女はたくましくなろうとするのです。サバイバルできる力を磨こうとするのです。育て方がよかったのか本能なのか。

私自身はあくまで人としてアウトドアや災害時に発揮される力は磨いておきたいなとずっと願ってきました。己の弱っちい足腰を鍛えて、肉体的にも精神的にも強くなりたいとずっと願っています。残念ながらたくましくなったのはメンタルと胃袋くらいで弱っちいままなのはトレーニング不足のせいなのですが、へなちょこだからこそずっと憧れているのです。鬼滅の刃の主題歌である『紅連華』にもあるように ♪つよくなれる自分を♪(引用以上)知りたい!と本当に思いながらなかなか知れません。

 

そんな母の切ない憧れを全く打ち破って、5歳の娘はタフな人どころか獣でも大丈夫と言いました。よく泣きはするけれど、彼女の足腰は頑丈で、まつさか香肌イレブンマウンテン(2020年度制定された香肌峡の山々11座)を次々自分の足で歩きこなしていきます。山岳会のおじさま方期待の星と言えるくらいのたくましさです。そして自己肯定感が驚くほど強いという特徴があります。もちろん『紅連華』も最後まで堂々歌えます。なんともうらやましいです。

 

サバイバル力は発揮されない方が平和に生きていけます。でもどうなっても大丈夫と描いて鍛えて日々をこなすことはかなり強い備えになります。ポリタンクを買い溜めるよりも、きれいな水のある場所を探しておけばいい。缶詰を買い溜めるのもいいけれど、木の根っこでも食べられると知っておくほうが安心する。獣としての生き様は決して楽ではないけれど、子供自身に生きる力がありそうなことは、親として最大に頼もしいものです。小さな娘が育っていっても野性味を保ち続けていられるでしょうか。とりあえず親子共々なまらずけもの道でも歩けるように、雪も溶けたことだし次の登山を計画中ですよ。