今週のお題「読みたい本」
自然農の実践者として奈良の桜井で大きな大きな使命を果たしてこられた川口さんが、つい先週、その尊い生涯を終えられたそうです。
ご自身の揺るぎない想いに従って、誰に何と言われようとも草や虫を敵としない自然農というスタイルを、慣行農法の農家出身でありながら頑固に真っ直ぐ貫いてこられた川口さんは、たくさんの痕跡を残され、引き継ぐ人を育てられ、自立しておられました。
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私は随分前に桜井の畑を1度訪れたことがあるだけで、直接の親交を築くことは叶いませんでしたが(そんな畏れ多い!)、数ある農の本の中で、川口さんの文章がとても美しいことは知っていて、特別なのです。自然農は思想でもありながらやはり実践の農法なので、多くの人が知りたいのはハウツーに関わることがほとんどです。亀成園父も川口さんの本では実行が難しく、「こういう場合はこうする」をできるだけかみ砕いてくれた本をより参考にして自然農の学びを深めていきました。実行する場合はそのほうが現実的ですが、思想に浸りたい私のような者には、川口さんの文章は宝石です。
畑に立つ姿もまた絵になるというか、洗練されているというか、ああこれが本来なんだという気付きを分け与えてくれましたが、やはり文章から立ち上る香りが格別に好きです。うっとりするばかりでその後の動きにつながるわけではないので、私が読んでも無意味かなとも感じながら、命とか生きるとかつなぐとかそんなことを信じられる力をもらえます。それはきっといつか何かに活かされるかもしれません。長い目で。
うちにある著作もあれば、ちっとも知らなかったものも。梅雨の機会に改めて読んでみたいです。え、読まずに晴れ間に実践してろって。それは多分、他の人には有意義でも私には無意味なのです。読むが大事。わがままでいい。
田舎暮らしの先住をしていると、自然農をやりたいという人は年々増えている実感があります。畑体験の申込も年々増えていて、情報発信力が上がってきたことだけでなく、ニーズが上がっているのでしょう。そこには食への疑いとか現代的なものからの脱却とかで、今の食生活は不安だから安心を求めてというケースが多いです。これだけいろいろな情報が取り放題の社会になってくると、不安になればキリがなく、安心して生きるために食を見直す人が増えるのは自然の流れなのでしょう。
けれどその安心につながる憧れの自然農を先駆けて実践されてきた川口さんの道は、憧れを求めてではなくどうにもそれしかできなかった信念の道でした。そんな道を苦しみながらでもなく淡々と歩んでこられた川口さんは、やはり使命に従って生きて来られた方なんだろうと、片鱗が伝わることが有難くてたまりません。
ナマケモノ倶楽部の辻信一さんとの共著やDVDも出ています。今回は読書がテーマという事で、動画貼り付けはなしで、読むことにつながる流れでありたいものです。
厳しい道であった自然農が、じっくりじっくりと育てて来て、やっぱりしあわせへのまわり道であったという素敵な物語を、堪能して心の灯にしたいですね。
この道を照らして沢山の人に分け与えて下さって、本当にありがとうございました。
使命を果たす生き方もまた、残された人々を生かし続けてくれるのでしょう。
自然農の尊い先人である川口さんのご冥福を心より祈ります。