豊かな森林生態系を100年先、もっと先まで残していくための課題にぶつかっています。資本の浅知恵に惑わされずに、どこまでも学びが必要だと思って、森林インストラクターの勉強を続けています。過去問など全然解答できるようにならないし、ぶち砕けそうで悩ましいところですが、テキストを読めば読むほど知りたかったこと、確信を得たかったことがズラズラと書かれていて、感激するのです。なぜ山を守らなければいけないのか。山間部の役目は、現状は、未来への道は。
思えば一年前に飯高町で大規模風力発電の計画が降ってきて、ものすごく違和感を感じながらも、なぜ山を守らなきゃいけないのかを論理的に説明することが難しくてすごくもどかしく悔しい思いをしました。
堂々と語れるようになるためには難関を突破することが肝要ですが、忘れたくないことのアウトプットくらいはしておいてもいいかな。
山村は国土面積の5割を占めていますが、人口はわずか3パーセントに過ぎません。そして過疎高齢化により集落が立ち行かなくなっているところが多く、10年先まで人の暮らす場所が保っていられるかも危ぶまれるような地域であるのが事実です。
けれど、現状、日本の森林は戦後に植林されまくった針葉樹が50年かかって伐り時になっていて、資源として成熟期を迎えています。林業従事者としては「出したいのに出せない。儲からない」悩みを抱えていますが、ポテンシャルは十分なのです。
山村が自立できる持続化事業があれば、地方創生が次世代につながっていきます。元々息の長い仕事である林業が地域の基盤にあれば、浮き沈みの多い時代の流れの中でも、多少安心して暮らすことができる人々の支えになります。今のままでは難しいことは山積みでも、可能性はとても高いのです。
農林水産省のページで山村をめぐる現状についてまとめたページを教えてもらいました。
https://www.maff.go.jp/j/nousin/tiiki/sanson/s_about/pdf/zyoukyou.pdf
その中で山村の果たす役割を現したのがこちらです。
森林には大きく8つの機能があります。
①土砂災害防止/土壌保全(表面浸食防止、表層崩壊防止)
②水源涵養(洪水緩和、水資源貯留、水質浄化)
③保健/レクリエーション
⑤物質生産(木材やきのこなど)
⑦快適環境形成(気候緩和、大気浄化、快適生活環境形成)
⑧文化(教育の場、祭りや伝統文化、芸術など)
このうち、森林があるからこそ経済が大きく守られている機能が①~④です。
私はいままでどちらかというと、自然環境を守るというときは、⑥の生物多様性保全が最重要で、⑧の文化的機能を次に重要視してきたので、自然保護の立場って、自然が好きな人以外には説得力が低いような気がしていました。感情に訴える以外にどうすれば森林や山の重要さが伝わるのか腑に落ちていませんでした。
けれど、国土保全に使うべきお金や、水の貯留や浄化に使うべきお金を、森林があるだけで担ってくれているとは、目からうろこでした。財政力の低い山村と言われていますし、経済的な立場は弱いと思いこんでいたから、開発やむなしとの声もあるのでしょうが、ちょっと待ったを言えるときも近いです(まだ資格がないから言えない)。
土と水を守り、世界に誇る緑豊かな国土を現実のものにしてきたのは、森を守ってきた先人達です。日本の山はずっと今ほど森林率が高かったわけではありません。木を燃料として当たり前に使っていた時代は、伐り出すのが当たり前で、うっかりするとすぐはげ山になってしまうので、入山を禁止して守ってきた背景がありました。
名古屋大学の高野先生が書かれた本にも山村の歴史など、とてもとても興味深く書かれていますし、この辺りの飯高地域の山も昔は枝一つ落ちていなかったそうです。みんな木を燃やして燃料にしていたのですね。
↓この本、サブタイトルはなんかなぁと思うけどめちゃくちゃ深いです。移住促進の最初のころにお話を聞く機会があった先生の本なので、大事な一冊です。
林業のお仕事のことも私はまだちっともわかっておらず、日々山に入り、植えたり整えたり伐採したりその前に道をつけたりというイメージしかありません。
自分の山で管理の仕事をする林業家さん、人の山を任される林業家さん、企業の山を現場管理する林業家さん、組合としての仕事をする人たち。
林業は技術力が必要で、気の長い仕事だから、誰もがすぐ即戦力になれるわけでもないし、現場で危険もある仕事なので、「You,林業やりなよ」なんて簡単にハッパかけられはしません。結構頭も使うと思います。ほんと、尊敬ですよ。
林業経験もなく、関係者でもないけれど、林業が活気付いてほしい思いは高まるばかりです。自分とこの農園は機械を入れないやり方で楽しくもがいていますが、かっこいい機械が嫌いなわけではないし、機械の力で盛り上がるのならいいやんとも思います。
スマート林業で動画検索するのもちょっと楽しいですよ。
北欧の森林は日本のように険しくないからだいぶ勝手は違いますが、イメージがあるからこそアイデアが沸いたらいいですね。