ありがたいことに小学校での本の読み聞かせボランティアを続けることができています。月に一度の放課後に図書室で、その時に選んだ本を聞いてもらうのは、いつもドキドキしながらの挑戦であり、目の前の子どもたちへのプレゼントでもあります。
有閑な暮らしにこだわり続けている私はずっと本も読み続けていて、古今東西の膨大な物語に触れていて、読み慣れ語り慣れているので、その有り余る経験から自信をもってお話を選んで届けることができます。
読み手がその話を深く理解していて、目の前の子に伝えたいと心から想っているかどうかは聞かせてもらう側にはめちゃくちゃ影響があるので、月に一度のドキドキデーには心を整えて大切な時を共にできることに集中しています。
ちょっと偉そうかな。できることがあるので力を惜しまずに向き合っているに過ぎないのですが、書くと固くなりがちですね。
読み聞かせをする物語として私が意識していることがいくつかあります。
年間を通じて、全然計画的でもなく行き当たりばったりでありながらも
・昔話と落語はどこかで入れるようにしよう
・美しい日本語の詩を聞かせる時をもとう
・世界のびっくりするようなお話をチラつかせよう
この3つは考え方の柱にあって、だからいつも本を選ぶ時には、定番ではないけれどもとっておきのお話を探し求めているのです。
絵柄や言い回し、言葉が今の子どもに受け入れやすいとは限らないものをあえて選んで、静かに聴くだけでなくやり取りすることも意識して、
「へぇー、わけわかんない」「びっくりだけど気になる」「なんだかおもしろい」「そんなこともありなのか」
こんな気持ちを居合わせたみんなでなんとなく共有出来たらいいなと望んでいます。
本や物語は人の世界観を広げるものです。見慣れた地域のおばちゃんが堂々とわけのわからんお話を語って小学生たちが聞かせられるという時間があることが、なんだかわからないけれど、子供らの心に残ってくれるといいなと思います。みんなで一緒にお話を聞く時間は、当てられることもなく叱られることもなく安心して過ごすことができる時間です。多分ね。その時に不思議な気持ちになったりびっくりして大笑いしたり、「そんなことってあるかー!?」ってモヤモヤ、むしろ憤りさえしているのに目の前のおばちゃんは「はい、おしまい」なんて素知らぬ顔でいたりします。そんなどこか理不尽な経験はわずかながら心のひだを増やしてくれるのではなかろうか。そうして無意識に増えていった心のひだが、折れにくく破れにくい心を作ってくれることをひたすら願っています。
学校の担任は責任のある先生という立場なので、道を外れるような話はできませんが、地域の無責任な人だと、時には道徳観外れまくりな話を届けることもできます。多感な思春期前の時期に、こんな気持ちももっていいんだよと心を軽くすることができるかなぁ、しなやかな心を育てる種をまけるかなぁとわくわくしながら向き合ってきました。
今月挑戦したお話はおともだちたべちゃったモンスターです。
初っ端からドキッとして、その後もずっと「えっ、なんだこれ?」となって、最後まで驚きのユニークなお話です。
食べられたお友達に意識が向いたそのままの流れでこちらに進みました。
弱い生き物のたくましいことといったら!
身勝手このうえない姿といったら!
しっかり心を開放して、ツッコミしまくって楽しんでくれた子どもたちの心が、また一層たくましくなったことを信じます。
ブラックな話としてはこちらも心の本棚にいつも入っています。大阪弁の訳なのでネイティブスピーカーとして読めますしね。
まとめて手元に置いておきたい人にはこれですね。
ブラックじゃない読み聞かせも力を入れておりますが、今回はなんだかブラックが要るとの直観のままに、やり取りを楽しむことができました。
我が子でもない子どもたちに私ができることなんてわずかしかなくても、参加してくれさえすれば、月に一度の読み聞かせで向き合うことができます。
いい子じゃなくても大丈夫やで。
好き勝手に生きてること、なかなかいいんやで。
いろいろあるけど、なんとなく皆で笑ってるの楽しいよな。
そんな言外メッセージを伝えることができます。
役得だなぁと噛みしめて、これからも続けていくだけです。
読み聞かせに対する思いをわりと真面目にまとめている過去記事もあります。
2年程前からは真面目路線よりも笑い多めと腹をくくったので、暑苦しさ控えめになっていますよ。
絵本のまとめもしてありました。
読み聞かせで使ったことがあるのもないのも。
絵本のことを考えるだけで心が満たされます。
いろんな本にいろんな子供の姿が出てきます。品行方正な良い子が描かれることはそんなになく、葛藤を抱えている子や繊細過ぎるような子、パワーの強い子など様々です。どの子にも主人公になるだけの魅力があるから面白いのですが、現実にはどの子とも友達でいられるわけでもありません。
ここは小さな学校なので、みんなで仲良くは当然なこととされ、実際風通しがよく気楽に過ごしている子がほとんどなのですが、もちろんユートピアではなくて葛藤もモヤモヤもあるのが当たり前なのです。喧嘩だってしますとも。ずっと良い子でもいられません。
だからせめて、いろんな本や物語に触れるきっかけがあることで、自分の心の置き所を見つけることができたらいいな、どの子も安心して育っていってほしいなと願っています。本の虫である地域のおばちゃんができる必死は、それしかありませんからね。